13


「僕は人付き合いが下手で、その分好きな人には怖いくらい依存してしまう。こんなの、こんなみっともないのは透には知られたくなくて、必死で物わかりのいい自分を演じてた。
 でも本当はきみの過去の女性にだってすごく嫉妬した。なのに、僕だって瑞葉のことを忘れられてない。それでいいって、透は受け止めてくれたのに、僕は透の過去が許せなくて……。
 そんな自分勝手な僕は、透に好いてもらう資格が、な、ない」
「……紘人」
「でもきみと離れるのは嫌だ。好きなんだ、透。きみのことが。だ、だからせめて……都合のいいときだけでも、僕と一緒にいて、そのときは僕を見ててくれればって……」
「紘人……」

それ以上聞きたくなくて、俺は紘人を胸に抱きこんだ。

「うん、もういいよ、わかった。わかったから泣かないで」
「透……僕は、本当は」
「うん」
「好きなんだ……透。別れたくない……一緒にいたい……」
「うん」

ぎゅっと紘人を抱きしめれば、泣いて興奮してるせいか彼の全身が熱い。あやすように年上の可愛い人の体を優しく揺する。
そうしながらも内心めちゃくちゃ感動してた。思ってたより俺は紘人に愛されてたんだなぁって。
彼はいつもクールで潔癖な性格に見えたからそういう執着ってないのかと思ってたけど、逆だった。
俺が遊んでたことを軽蔑したんじゃなくて、ヤキモチ焼いてたんだ。

他の奴だったら絶対うざいって思うけど、紘人だと可愛いなあってしか思えない。
そう思う俺も紘人のこと心底愛しちゃってんだよね。こういうの目に見せられればいいのに。紘人に伝わればいいのに。

「なんか……俺が思ってたより単純じゃなかったんだね。ごめん、追い詰めるようなこと言って。そんなつもりなかったんだけど……」
「違う、透は悪くない。僕が、僕一人がいつも空回ってて」
「いいってもう、そういうのはさ。俺、紘人にフラれると思ってすげービビッて、連絡ない間、生きた心地しなかった」
「僕が?まさかありえない」
「うん、その言葉だけで浮かれちゃうくらい単純なんだよね、俺。だからもっと肩の力抜いてさ、紘人からも好きって言ってよ。それだけで俺、あんたの言いなりよ?」
「……善処する」

そう言った紘人は真っ赤になってて、すごく照れてるのだとわかった。

「好きだよ、紘人。大好き、ちょー好き」
「……僕も、す、好きだ」
「あんたが嫌だって言うなら交友関係全部切るよ?紘人がいればいいもん、俺」

さっきの紘人の言葉を思い出して言ってみれば、彼は驚いたように首を振った。

「現実的じゃないことだってのはわかってる。というか、言っておいてなんだが、僕のためにそこまでそこまでしなくていい……というかされると困る」
「なんで?」
「僕が透を軟禁しそうで……」
「いいよ、それでも」

倒錯的な願いを脳内でシミュレーションして、俺はうっそりと笑った。
結構本気で言ったんだけど紘人は自分で言い出したことなのにドン引いてた。ひどい。

「ただの極論だ。僕は、別にそこまでして束縛したいわけじゃない」
「そっか。でも俺はいつも紘人を優先してるからね?これは自分の意思だから。それだけ覚えておいて」
「……ん」

俺の背中に紘人の手が回される。
うーん、そんなぎゅっとされたらキスができない。まあいっか。紘人が落ち着くまでこうしてれば。


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