12


俺は長く深い溜息をついた。そうすると紘人がビクッと肩を震わせた。

「そういうの、俺どうすればいいかわかんないや」
「……やっぱり、嫌、か……?」
「つーかね、俺は紘人のことがすげー好きで、あんたと出会ってからずっと紘人だけなんだけど、そういうの、どうすれば信用してもらえるのかわかんない」

紘人が息を呑む。俺はもう諦めの境地でぽつぽつと言葉を重ねた。

「過去はどうしようもないし、何度考えても答えが出ないんだよね」
「と、透……」

紘人も傷ついたように顔を歪めた。

「俺、紘人と別れたいなんてこれっぽっちも思ってないよ?でも紘人が昔のこととか気にするならどうすればいいかって考えてて、その挙句がセフレ希望みたいな答えって……正直堪えるわ」
「…………」
「俺には紘人しかいないのに、二番目とか……そういうの言われると傷つく」

堪らなくなって紘人をぐいと引き剥がした。
望んでたのはそんな答えじゃない。いっそ別れようってバッサリ切ってくれたらまだよかったのに。そうしたらみっともなく縋って捨てないでくださいって言えるのに。
そんな風に諦めたような目で身を引かれるとどうしようもない。
俺が何言っても意味がないんだって思わされる。

気まずい沈黙が二人の間に落ちた。
まあこんな綺麗で真っ直ぐな人と俺みたいなちゃらんぽらんなのが付き合うってのが無理だったのかもしれないな。
セフレとかそんな割り切った関係なんてもっと無理。俺は紘人の目にはそんなひどい男に見えるの?
ああ、もう、潔く諦めるしかないのかな。
するとはらはらと紘人が涙を流した。突然泣き出したのでぎょっとする。

「ぼ、僕は……」
「うん?」
「僕は、嫌だ、きみが、ほ、他の女性といるのを見るのも、友達といるところを見るのも、嫌だ。嫉妬ばかりして、醜い」
「…………」
「きみがたくさんの交友関係があるのは知ってるけど、でも、僕だけ、見ててほしくて……」

紘人がしゃくりあげながら一生懸命喋る言葉を、俺は一字一句漏らさず聞いた。
たぶん、彼の偽りない本心だと思ったから。


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