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観念して紘人の言葉を待つ。なのに紘人は俺に抱きついたまま動かない。
そんなに密着されると股間が当たって気まずいことになるんですよ紘人さん。俺は思わず溜息をついた。
「透……」
弾かれたように俺を見上げてくる青い瞳。白目が真っ赤で痛々しい。
あーキスしたい。いや、ここでキスするほど空気読めない子じゃありませんよ?
努めて冷静に紘人を真正面から見据える。
「すまない、透」
紘人の謝罪の言葉にドクンと心臓がはねる。
――ゴメンね透、透は悪くないの。でも別れましょ。
――ごめんなさい。あたし透に愛されてるかわかんなくて。
そんな過去の女の別れの言葉が一瞬よぎる。今まではそれをしょうがないと受け入れてきたけど。
……ど、土下座して縋れば別れないでくれるかな!?
カッコ悪いけど紘人にならいくらでもプライドを捨てられる!……よし来い!!
衝撃に耐えるようにぐっと唇を結んで紘人の言葉を待った。しかし――。
「透……二番目でも三番目でも構わないから、僕を手元に置いておいてほしい」
「……はい?」
なんか予想とかけ離れた言葉が聞こえて、本気でわけがわからなくて聞き返した。
「な、なんだって?」
「だから……その、都合のいいときだけでいいから……きみの好きにしてくれ。きみは嫌かもしれないが……」
いや……うん、何言ってるのこの人?それじゃセフレ希望にしか聞こえないんですけど。
「えっと……それって、何? 紘人は俺と付き合えないってこと?」
「僕はきみと付き合う資格がない」
「資格って何?」
ムッとして聞き返すと、紘人が少し怯んだ。
「きみは女性が好きなんだし、やっぱり僕とは、その……」
「……俺を好きだって言ってくれたのは嘘だったの?」
「違う!嘘じゃない!でも、きみの過去の女性達のように、僕はできないし――」
……あーわかった。この人、自分で仮想の敵を作って臆病になるタイプなんだな……。
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