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「水――水はあるか?」
「こ、ここに……」

サズ隊の薬師がグランに水筒を渡す。中にはきれいな飲み水がたっぷりと入っていた。
コップに水をなみなみと注ぎ、その中に小瓶の中の砂を全部入れる。
砂はすぐに溶けて水が血のようになった。

「飲め」
「え?」
「これを飲めば、あんたの魔力もちょっとは戻るから」

グランにそう言われて、エリオットはコップの液体を飲み干した。不思議と血の味はせず、ただの水のようだった。

すっかり飲み干すと、魔力を失って冷えた指先に熱が戻ってきた。
濁り始めていたエリオットの瞳も澄んだ湖のような透明感を取り戻す。

「……どうだ?」
「ああ……大丈夫。ありがとう……」
「よかった」

険しい表情をしていたグランがホッと口元を緩める。それは人を惹きつける優しい笑顔だった。


続けてローザロッテに傷の治療を施された。
細かい傷を残してエリオットの大きな傷が治癒される。まるで気付かなかったが肋骨にひびが入っていたようだ。
彼女はすでにベリアーノ・トゥギー隊の大規模な治療を行ったようで、これが力の限界だと弱々しく笑った。

「エリオットよりメグのほうが重傷でさ、先にあの子の治療しようと思ったんだけど……」

メグは初めて使う炎の魔法の負荷で両腕にひどい火傷と水ぶくれを負っていたそうだ。しかし彼女はエリオットを優先してくれとローザロッテに気丈に微笑んだのだという。
その話にエリオットは彼女の芯の強さを見た。

「ところで、どうしてきみたちが……?」

エリオットがグランに問いかけると、彼は面倒くさがらずきちんと応えてくれた。

「ああ、俺たちが分岐路で待ってたときに、ベヌが一匹横穴から逃げてきたんだよ」

そうして、ベヌの動きがおかしいことに気付きグランが様子を見に行ったら、ギガントベヌートがベリアーノたちを追っている様が見えたのだという。

慌てて元の場所に戻り、事情を説明してロスバルト隊へと報告に行ったが、ベヌートから逃げてきた様子の他のベヌの群れに苦戦していたのだという。
サズ隊も合流して三隊でベヌを掃討し、ようやく追いついたのがついさっきなのだという。

「遅くなってごめんな」
「いや……きみたちが来てくれて助かった」
「それにしても、あのでっかいのを倒したなんてスゲーな、あんた」

ニッとグランが悪戯っぽく笑う。

「かなり危険な賭けだったが」
「終わりよければ全て良しって言うんだよ!」
「はは……」

まったく、その通りだ。
そしてややあってから、仲間達の雄叫びがベヌートの穴倉に響いた。





――勝利の叫びだった!


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