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皆がその場に座り込んで戦闘の疲れをしばらく癒す。
そこでようやくジンイェンがエリオットのもとに戻ってきた。
「ジン……」
エリオットはジンイェンの服の裾を掴んだ。彼の服はベヌの血で汚れ、ひどい有様だ。
「ん?なに、どうしたの?」
「……怪我は」
「ないよ?俺がのろまなベヌに捕まるわけないって」
あの素早い動きをのろま呼ばわりとは、ジンイェンの自信はかなりのものだ。
「心配した?」
「……した……」
「はは。アンタこそ大丈夫?結構魔術使ったみたいだけど……」
メグ一人で使ったにしては多すぎる火の被害に、ジンイェンはエリオットの活躍を知る。
「あの……エリオットさん、本当に、すごくて……」
メグがすかさずおずおずとジンイェンに報告する。ジンイェンはそれを聞いて満面の笑みを浮かべた。
「うん、知ってる。エリオットがすごいのは」
断言するジンイェンに、メグが「ですよね!」と同意して笑った。
ジンイェンにそこまで信頼されていると知って、エリオットは真っ赤になった。嬉しさと、恥ずかしさと、誇らしさがない交ぜになる。
すると、アニタがぬっと割り込んできてエリオットとメグに小瓶を渡してきた。
「……これ、少し、元気になる」
「――魔力の回復薬か」
今のエリオットは穴の開いた桶のようなもので魔法薬の類はあまり効かないが、これはアニタの仕事でもあるのでありがたく受け取った。
自作の回復薬を気休めに少し持ってきていることはなんとなく黙っておいた。彼は承知しているかもしれないが。
アニタはすぐに他の仲間たちに声をかけ、怪我の治療や滋養薬などを分け与えていた。
受け取った薬をどうしようか悩んだが、一応一口飲んでみる。香草の独特な強い匂いが鼻の奥に突き抜けた。
やはり焼け石に水で、減った魔力はほとんど戻らなかった。喉が潤ってちょうどいいといったくらいでしかない。
「エリオット?」
気遣わしげにジンイェンがエリオットの背を撫でる。エリオットは彼の肩に額をくっつけた。
「……すまない、ちょっと肩を貸してくれ」
「うん?いいよ」
薬より何より、ジンイェンの体温を感じながら眠ったほうが今のエリオットには効果があるようだった。
安心させるようにポンポンと背を叩かれると、エリオットはあっという間に眠りに落ちた。
ジンイェンはそんなエリオットの肩を抱いて微笑んだ。
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