6


エリオットは彼の屹立を軽く握り、その穂先をアナルに擦り付けた。すると雄同士を重ねた先程とは違って、むず痒いような感覚にそこが疼いた。
慎重に腰を落としてジンイェンのペニスを徐々に、しかし確実に飲み込んでゆく。もどかしさと物足りなさから大胆に奥深くまで。

「んっ……ん、あっ、あっ……入っ、た……」
「うーわ、すっげ……」

エリオットの中に収まる気持ち良さは十分に知っていたつもりのジンイェンも、思わず感嘆の呻きが出るほど、内壁の締まりと熱さで蕩けそうになった。
湧き上がる感覚をどうにかやり過ごそうと耐えている恋人の健気な姿にもくらくらとする。
先走りを滴らせながら揺れている一物を、ジンイェンは悪戯心から指で弾いた。エリオットがビクッと大きく跳ね、同時に内部もぎゅうっと狭まる。

「ジ、ジン……!」
「もーエリオット、いつまで焦らす気?生殺しなんだけど?」

からかいつつジンイェンの両手が包み込むように尻を撫でたので、エリオットは反射的に腰を上げた。
一度そうしてしまえばもう止まらなかった。腰に緩く添えられた恋人の手を握りながら尻を落とし、また持ち上げる。それをひたすら繰り返した。
中の特に感じる一点を夢中になってジンイェンのペニスで刺激する。結合部が摩擦すればするほど、むず痒さは痺れるほどの快感に変わった。

「あっ、あぁっ、んんっ!ジン、あっ、すごい……っ」
「ん、もっと、アンタの好きな、ようにして、いーから」

ジンイェンが動かずともエリオットのほうから激しく抜き差しを繰り返した。まさに搾り取る勢いだ。
セックスとなるといつも翻弄されてばかりのエリオットだが、今夜はジンイェンを情熱的に貪った。

「……なんか、さ」
「ふ、あっ、あっ、んぁっ……」
「アンタのこんな姿……んっ、前にも見た、よね」

言われてもすぐには思い出せず、エリオットは熱に浮かされた頭でぼんやりと記憶を遡った。けれど結局まとまらずに、前立腺を雁首で強く刺激されたことで背を弓なりに反らした。
そうして繋がっている様を見せ付けるようにするエリオット。汗で濡れ光る肌を薔薇色に上気させた半裸の姿は、このうえなく扇情的にジンイェンの瞳に映った。
精油がまるで体液の一部のように熱く濡れている。
部屋の中に充満する獣のような息遣い。思うさま乱れ、激しく動く二人分の重みに耐えかねてベッドがギシギシと軋んだ。

「んー、すっごいね……マジ気持ちぃ……」
「だ、駄目だ、僕……あっ、ンッ、が、我慢、できな……っ」
「しなくていーのに。こんな、硬くして」

繋がっている間もエリオットのペニスは萎えることなくずっと勃ちっぱなしだった。汁を滲ませながら動きに合わせて揺れている。
触ってほしいと懇願すれば、ジンイェンの手がそこを上下に扱いた。巧みな手淫でエリオットの熱が限界まで昂る。

「あっ、ジン、あっ、もう、僕……ッ!」
「俺、も、イキそ……、うっ……ん、んんっ!」
「あァっ、ああぁっ!!」

甲高い嬌声とともにビュッと勢い良く白濁液が飛ぶ。それはジンイェンの腹や胸を汚した。
エリオットが射精をすると中もひときわぎゅうぎゅうと引き絞られ、ジンイェンは腰を突き上げた。鋭く抉るようにしてアナルの奥の奥までペニスを収める。それと同時に瞼の裏がちかちかとして熱が弾けた。
中で断続的に熱い精液が注ぎ込まれると、エリオットは敏感に細腰を震わせた。

「う、ぁ……ジ、ン……」
「俺は、アンタのものだからね、エリオット。覚えといて」
「ん……」

愛の交歓の余韻に浸りながら恋人と見つめ合う。この瞬間がなにより愛おしく、喜びで満ち溢れている。
絶頂の波が過ぎて脱力したのを見計らい、繋がったままゆっくりと口付ける。
エリオットが腰を浮かせるとジンイェンのペニスが抜けた。
中で出された精液がとろりと滴り落ちたそのとき、エリオットは我を忘れた自分を省みて今更ながら恥ずかしくなった。

「……あ、思い出した」
「な、なんだ」
「魔力交合だよ」

交合術は二人が初めて繋がったときに使ったものだ。あれは様々な意味で驚きの連続だった。
それがどうかしたのかとエリオットが首を傾げていると、ジンイェンは隣を空けて横になるよう促した。エリオットもベッドに沈み込む。

「あのときはホラ、魔術のおかげで俺の上に乗ったりしてめちゃくちゃ乱れまくりだったじゃない?」
「…………」
「今のアンタ見てたらさ、あの術って実はアンタの本来の欲望を引き出しただけなんじゃないかなーって思って」

術のせいで自分ではない姿になっていたわけではなく、禁欲的な性格の奥底に隠されていた劣情を開放しただけではないか。ジンイェンはそう言いたいようだった。
こんなにも貪欲ではしたない姿が本来の自分なのだと自覚したら、ますます羞恥に拍車がかかった。嫌な気分ではないが居心地が悪い。

「いや、うん、そうかもしれないが……改めて言わなくても」
「そう?俺は嬉しいんだけど。一人で盛り上がっても空しいだけだし」

ともに情交を楽しめないとやはり味気ない。そういう意味でも二人の相性はぴったりと収まりがいいということを、身に染みてふたたび実感した。
ジンイェンは締まりのない顔をしながらエリオットを引き寄せて、強く抱きしめた。

達して興奮が落ち着いてくると、不思議なことにあれほど熱かった精油の効果もいつしか醒めていた。ただ部屋の中に爽やかな薫香だけが残る。
これを魔術交合で使ったとしたら大変なことになりそうだ。そしてこれに慣れてしまうと通常のセックスができなくなってしまいそうである。
使うのはこれっきりにしようと、エリオットとジンイェンは頷き合ったのだった。


prev / next

←back


BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
×
- ナノ -