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三日間の謹慎後、エリオットは驚くほど穏やかな気持ちでフェノーザ校の門をくぐった。
謹慎最終日は時間がある限りジンイェンと二人でいることにしていた。彼のほうもエリオットの気持ちを汲んでべったりとくっついて離れないほどだった。
暇さえあれば口付けたり、気持ちが盛り上がれば性的な触れ合いも少しした。
そうした恋人同士の戯れに気持ちが満たされ、もう誰に何を言われてもいいという気構えができたのだ。

装い新たなエリオットを見かけた生徒や教授たちが息を飲む。エリオットも珍しく微笑みながら朝の挨拶を交わした。
准教授室のドアの前に来ると、さっそくモーガンがやってきて嫌味っぽく鼻で笑った。
モーガンの准教授室は別塔にあるのにわざわざ来てエリオットが来るのを待っていたに違いない。

「これはこれは、最近業務を空けがちなヴィレノー准教授ではありませんか」
「……おはようございます、モーガン准教授」
「謹慎中に華美な装いとはさすが子爵家のご子息殿はお気楽なものですな。羨ましい限りで」

嘗め回すようにエリオットを上から下まで見てモーガンが嘲笑した。
わざわざそんなことを言いに来たのかとエリオットは呆れた。本当に他にすることがないのかと言ってしまいそうになるところをぐっと抑える。

「日頃の怠惰を省みて少し身なりを整えただけですよ。何か問題でも?」

エリオットはにっこりと微笑みながら余裕の態度で返した。
想像したような反応が見られなかったらしいモーガンは、悔しそうに表情を歪めながら真っ赤になって歯噛みする。
そのままモーガンは一言も発さずにうるさく足音を鳴らしながらその場を去った。

ホッと息を吐いて准教授室に入ると、同僚のスメラータとチャールズがいた。エリオットの顔を見るとすでに騒動のことを聞いていたのか親身に労ってくれた。
二人の話を聞くと件の騒動は学内に浸透しており、その内容は『魔術について討論していた際に言い争いになり、クロード卿が魔術を行使しそれを諌めるためにエリオットがやむなく魔術を使った』とされていた。

事実とは全く異なるし無茶な内容だったが、学内ではこれで落ち着いているらしい。おかげで皆にはクロードとは『かなり親しい友人同士』として認識されてしまったようだ。
とはいえ真実を話すわけにはいかないので訂正しようがない。エリオットはその通説で納得するよう自身に言い聞かせた。

そもそも彼とはこれ以上の接触はないだろう。相手は宮廷住まいの旅団長なのだ。
学内もその程度のことで謹慎になったのだとして概ねエリオットを同情的に見てくれたので、気まずくなることなく業務に戻ることができた。


ジンイェンもそのあたりのことを心配していてくれたようで、帰宅して一番に報告すると安堵したように笑って抱きしめてくれた。




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