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エリオットとジンイェンはベッドに腰掛けて舌を絡ませながら口付けた。そうすると甘く重い痺れが下半身を襲い、情欲の呼び水となる。

口付けながらジンイェンがエリオットのローブを脱がせる。エリオットも彼の素肌に触れたくてもどかしげに長着の留め具をはずした。
エリオットの服はすぐにシャツの釦まではずされ華奢な肩が露出したが、ジンイェンの服はなかなか脱がされなかった。
ヒノン装束は構造が独特で脱がすのがなかなか難しい。それを察して、ジンイェンは自ら上着を脱ぎ去った。
目の前に筋肉質の裸の胸が晒され、エリオットは思わず見惚れた。

「ん、なに? そんなに見られると照れるなぁ」
「い、今更じゃないか……」
「まーそうだけど」

ジンイェンがくすりと笑いながらエリオットの頬に口づける。そのまま手をエリオットの鎖骨に滑らせた。
くすぐったさにエリオットが肩を竦める。ジンイェンの温かい掌はゆるゆるとマッサージをするようにその背や胸や腹を撫でた。
エリオットの肌は色の白さもさることながらその手触りは滑らかで、汗が滲むとしっとりと手に吸い付くようだった。
女性の柔らかさや肌理の細かさとは明らかに違う。しかしいつまでも撫でていたくなるしなやかさだ。少し痩せすぎなのは心配だが。

「は……」

手の動きに感じ入ったようにエリオットが甘く息を吐く。それだけでジンイェンは理性がどこかに飛んでいってしまいそうだったが、必死にそれを繋ぎ止めた。
最初も二度目も性急にしすぎた。今までならばそんな風になることは決してなかったのだが――。
とにかく今はゆっくりとエリオットを感じたい。そして、感じて欲しい。ジンイェンはそう思いながらエリオットの細い腰を両手で掴むようにして撫でた。
ジンイェンの手の動きにゾクゾクと官能が走り、エリオットは体を震わせた。

「あ、ごめん駄目だった?」
「い……いや……違う……そうじゃなくて……」

エリオットは言葉にするのを恥じらい、頬をほんのりと赤く染めた。

「こういうの、気持ちいい?」
「……ん」

ジンイェンに聞かれて素直にこくりと頷く。それを受けて手の動きはさらに淫らに肌の上を這った。
エリオットもそれと同じことをしてみる。ジンイェンの肌は少し汗ばんでいるにも関わらず触っていて心地がいい。
どこもかしこも固く締まっていて、同性として羨ましいほどの肉体だ。
体中あらゆる場所に大小古傷の痕があり、それが余計に雄らしく色っぽく見えた。
まさか同性のそんな姿に欲情する日が来るとは思わなかったけれど、それを厭う気持ちもない。
ちょっとした悪戯心が働いて、エリオットはジンイェンの腹のもっと下に指先を這わせた。

「……っ」

まさかそんなことをされるとは思っていなかったらしいジンイェンが目を見開いて肩を震わせた。
ゆるゆると下衣を探ると、そこはもう固くなっていた。

「あの……ちょ、エリオット……?」
「僕が触ったっていいだろう?言っただろ、そういう気分なんだって」
「そりゃ嬉しいけど……」

戸惑ったようにジンイェンが苦笑する。エリオットは帯を解いて前をくつろげた。
色の濃いジンイェンのペニスがちらりと露出すると、不思議と興奮した。
こうして見てみると、太さや長さが自分のものより立派な気がした。比べるようなものではないが、それでも違いを発見しては感心してしまう。

「あのー……そんな見られると、恥ずかしいって……」
「あ、ああ、すまない」

知らないうちに凝視していたらしく、エリオットはあわてて目を逸らしたが、その形は目に焼きついている。
ジンイェンはくすりと笑って、エリオットの手を自身に添えた。手の中に熱を感じてエリオットはまた視線を戻した。

「ね、触ってくれる?」

その掠れた囁き声に色気を感じ、エリオットは誘われるまま小さく頷いた。これでは新婚初夜の無垢な妻のようだ。
自分でするようにゆっくりと擦り上げる。そうするとジンイェンのペニスは手の中でまた硬度を増した。

「ん……」

ジンイェンが吐息と共に甘い呻き声を上げたのが耳に届き、エリオットは堪らなくなって彼の薄い唇にキスをした。
口付けを受けながら、ジンイェンもエリオットの陰茎を服の上から撫でた。

「俺も、触ってもいい……?」
「う……ん」

躊躇いながらもエリオットは頷いた。エリオットのそこももう硬度を保っており下着を押し上げている。
下着の隙間から直に触れられると、その生々しい感触にエリオットの背筋がのけぞった。

「あっ……」
「エリオット、熱いね……」

耳元で囁かれると、それすら官能を刺激するようだった。
互いに手で擦り上げながら、高めていく。先走りが溢れ湿った音が部屋に響く。
唇を重ねながら擦りあいをしてると妙に興奮した。ジンイェンの手の動きは巧みであっという間に追い詰められる。

「んっ、ふ、ふぁ……あっ」

気持ちが良くてエリオットは甘い声を上げた。ジンイェンも息を荒げている。
エリオットはジンイェンの手の中であっけなく果ててしまった。
快感に手が震えて、ジンイェンのものから思わず離してしまう。急に止めてしまってまずいと思ったが、その手は押し留められた。

「も……いいよ。ありがと、エリオット」
「だが……」
「いいの。俺だって気持ちよかったし」

手を布で拭きながらジンイェンが気遣わしげに笑う。やはり、彼は強姦のことを気にしているのだろう。

「その……ジン」
「ん?」
「……好きだ」
「ははっ、珍しく素直だね?嬉しいよ、エリオット。……俺がさ、ちょっと我慢できなくなっちゃったら、またこうして触ってもいい?」
「…………」
「……アンタを怖がらせるようなことは、もうしないから」
「ああ……」

可愛くない性格だと、エリオットは歯噛みした。ここで「もう気にせずに触れてくれ」と言えたらどんなにいいか。
ジンイェンは、この意固地で柔軟性のない男のどこがいいというのだろう。
難しい顔をして考え込んでいるエリオットのこめかみにジンイェンが笑いながらキスを落とす。
夕食と湯浴みのあとジンイェンの頼みで一緒のベッドに潜り込んだ。耳元をくすぐったり時々口付けたりしながら他愛のない話をしてそのうちに眠りに落ちた。




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