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しばらくの間、互いに黙り込んだ。

ぴたりと噛み合ったはずの歯車が些細なことでずれてしまい、素直になりきれない。想いは通じ合ったと思ったのにうまくいかない。
けれど離れたいとは思わなかった。どこを落としどころにするか悩んでしまう。

エリオットは俯いて両手で顔を覆った。
いい年の癖に恋愛下手な自分に嫌気が差したのだ。もうこんな空気は耐えられない。

「……ジン」

エリオットに呼ばれ、ジンイェンは背筋をぴんと伸ばした。

「――僕にキスしろ」
「……はい?」

意外な言葉にジンイェンの目が丸くなる。
エリオットの真意を図るように迷っていると苛立ったような言葉が突き刺さった。

「するのかしないのか」
「し、します……!」

ジンイェンは恐る恐るエリオットの隣に座り、俯いて顔を隠してしまっている彼のつむじに軽くキスを落とした。
傍らに来たジンイェンの胸倉を掴むと、エリオットは彼の口元のほくろと、薄い唇にキスを返した。

「……エリオット」
「くそっ……もう、きみがいない間に僕がどれだけ……!」

らしくもなく口汚く悪態を吐くエリオットに、ジンイェンは唇を重ねた。そのまま唇を入れ替えながら荒っぽくキスを繰り返す。
エリオットは酒樽になってしまったかのように全身酒臭かったが、それがかえってジンイェンを酔わせキスに夢中にさせた。
途中前歯がぶつかったが気にしなかった。
貪るように互いの呼吸を奪い合うと、エリオットの固まった心が溶けていくように感じた。

「ジン……ジンイェン、僕はきみだけだし、きみも僕だけにしてくれ」
「もちろん……ってか、俺はアンタと会ってからずっとそうだよ?そもそもそういうことする暇もなかったし」
「……きみがそう言うなら、そういうことにしてやる」
「信用ないなぁ」

困ったように笑いながら、それでもジンイェンはどこか幸せそうだった。

「ね、エリオット……俺をアンタのただ一人にしてほしい」
「だから、そう言ってる」
「うん。……だから、聞いてくれる?」

何を、と聞こうとしてジンイェンに人差し指で唇を留められた。
そのまま肩に顔を埋めながらジンイェンが縋るように抱きしめてきて、その重みに耐え切れずエリオットは彼と共にソファーに倒れこんだ。

「……あのね、俺がどうしてヒノンに……故郷に行こうとしたのか、ちゃんと言うよ。ちょっと、長くなるけど――」
「ジン……?」

ジンイェンはしばらく黙り、そして意を決したように口を開いた。





第三章 END


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