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寒河江くんの巧みな愛撫に翻弄されているうちに、上を脱がされ、下まで一気に下ろされた。服が彼の手によって全部床に落とされて、あれよという間に俺は素っ裸。
無防備になった肌の上を濡れた唇の感触が這う。首から鎖骨、胸、乳首、腹、足の付け根――までいったところで、思わず両腕で顔を覆った。

「……舐めていい?」

下のほうからそんな声が聞こえたが、俺は羞恥心から、うぅ、という情けなく消極的な返答しか出来なかった。
ごめん寒河江くん、本心を言うならものすごく舐めてほしい。好奇心とエロ心には逆らえないんだ。フェラだなんて、してほしいに決まってる。
しかし男が男のそれを口で……っていうのは、大丈夫なのかな。寒河江くん、無理してない?
そんな懸念から「やっぱりやめてください」と言おうとしたが、その前に寒河江くんが俺の股間のソレを握りこんできた。当然のようにそこはすでに硬くなっている。

「ん……っ」

先端にぬるりとした、温かいものが触れた。寒河江くんの舌だ。
竿にぬるぬると舌が這う。下から先端に向かって舐め上げられると、たまらずに高い声が漏れた。

「あっ……さが、え、くん……うっ」

横からカリの部分を咥えられ、一番気持ちいい裏筋を集中的に攻められた。ここが好きなのは男として共通だし、当然心得ている寒河江くんの舌が卑猥に動いた。下半身に痺れるような熱い疼きが一気に集中する。

「す、すご……それ、ぁ……あっ、んんっ」
「ん……」

寒河江くんはやがて、俺のを先っぽからぱくりと咥えた。一度竿まで収まって先端までゆっくりと動く。丁寧に、搾り取るように。
温かい口内に包まれたその感覚は天にも昇る心地で、知らず腰が揺れた。
口と同時に手でも竿を刺激される。熱い。熱くて汗が肌の上を伝っていく。
キュッと吸ったり、ぬめった柔らかい舌が窪みを的確になぞるから、そのたびに快感に悶えた。
フェラがこんなに気持ちいいものだなんて知らなかった。どうしよう、こんなんじゃすぐ達しちゃいそうだ。

「ぅあ、ん、ん……も、俺、い、イキそ……っ」

上ずった声でそう零した途端、ちゅぽっ、とやたらとエロい音をたてて寒河江くんが口を離した。
夢見心地からいきなり開放されたやるせなさから顔を覆っていた腕を外した。そうして見上げた先には、寒河江くんのうっすらと笑った顔があった。

「まだダメですよ」
「へっ?」

せっかくいい気持ちでイケそうだったのになんてひどいことをするんだ、寒河江くんめ。
ついつい恨みがましい目を向けてしまうと、寒河江くんは目を細めながら宥めるみたいな手つきで俺の髪を梳いた。

「オレのくち、気持ち良かった?」
「あ、当たり前じゃん……」
「……そうですか」
「んっ!」

寒河江くんの唇がまた首に滑る。そこを刺激されて走るゾクゾクはもう、快感以外のなにものでもない。
衣擦れの音が聞こえたと思ったら、寒河江くんもズボンと下着を脱いで床に落としたらしい。
これで二人とも裸だ。寒河江くんはアクセサリーをつけたままだから、完全な裸とは言えないかもしれないけれど。
唾液と先走りでぬるぬるになっている俺のものに、寒河江くんのそそり立った先端の鈴口が触れる。寝転ぶ俺の上に改めて跨った寒河江くんは、俺と彼の勃起したものを擦り合わせた。

「あっ……!」

寒河江くんの腰がゆるやかに動く。それにつれて俺と彼の裏筋が擦れると、フェラとはまた違った快感に支配された。
それは、俺だけじゃなくて寒河江くんも一緒に気持ち良くなっているんだという共感からくる感覚だ。
しばらくその状態で腰を動かしていた寒河江くんだが、やがて二本まとめて握りこんだ。そうすることによってより密着する俺と寒河江くん。
なんだよこれ、すごくエロい。性器同士をぴったりくっつけて同時に扱くなんてやり方、考えもしなかった。
男同士でもエッチの方法は色々あるんだな。前回みたいに一緒に抜き合うくらいだと思ってたのに。

「あ、あっ、う、んっ……さ、さがえく、気持ちい……ぁっ」
「んっ……あーもう……マジ可愛い……」

寒河江くんの体が覆いかぶさってくる。
耳元や首筋を啄ばむ彼の背に手を回して抱きしめた。寒河江くんの体も汗で濡れていて指先が滑る。
そうか、やけに暑いと思ったらクーラーがついてないんだ。けれどそんなのは些細なことだと思った。だって汗の匂いの濃さが野生的で、興奮が煽られるから。
カチカチに反り返った俺と寒河江くんのものが裏筋同士を刺激しながら上下に擦り上げられる。彼の腰が揺れ、ハァハァと息が乱れている。
俺たちは夢中でその行為に没頭した。ただ二人して快感を追い求める。それなのに愛おしさも付随しているから手に負えない。
もっと続けばいい、寒河江くんと長くこうしていたい――それは単純な性欲の発散とは明らかに違う気持ちだ。けれど、高まった熱を開放したいのもまた男としての生理的欲求だ。
つまり、もう限界。

「さっ……寒河江くん、も、もうイキそ、なんだけど……んっ」
「うん、オレも……」

さっきはいいところでおあずけされた射精感を切に訴えると、上ずった声音で寒河江くんが同調してきた。
まるで突き上げるようにしてますます寒河江くんの腰が揺れる。粘った音が大きくなったような気がした。あとは何も考えず出すことだけに集中するばかりだ。
寒河江くんと一緒に。

「あ、いく、あっ、うぁっ……!」
「んっ!」

絶頂の瞬間が訪れた少しあとに、寒河江くんも呻いた。生温かい飛沫が体にかかる。
そうっと下半身に視線を向けると、俺の腹の上に白い粘液が飛び散っているのが目に入った。寒河江くんの十字のピアスがその先で揺れている。
この前みたいな喪失感はない――あるのは満たされた気持ちだけだ。
はっ、はっ、と荒く息を吐く寒河江くんの背に腕を回す。そうすると、まるで引き合うように俺たちの唇は重なった。


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