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顔を覗き込まれながら「ん?」と促されて、俺は決心してこくりと頷いた。だって、今のところキスもボディタッチも全然抵抗ないのは揺るぎない事実だし。

「上、脱いでください。オレも脱ぎますから」
「う……うん」

なんかリードされてる?もうなんでもいいや。初心者の俺が下手に頑張るより寒河江くんに教えてもらったほうがいい。俺と彼はずっとそうやってきたんだから。
俺がもぞもぞとシャツを脱いでる間に寒河江くんは潔く脱ぎ去っていた。布がなくなるとクーラーの風が肌寒くて鳥肌立った。
海で見たはずの上半身はこういう状況だとまた違った感じに見える。
まぎれもなく男の裸なのに好きな人のものだと思うとドキドキしてたまらない。寒河江くんのヘソに光るピアスが、より一層淫靡で目を惹いた。

寒河江くんが俺のうなじをやんわりと掴んで顔を近づけてきたから、目を閉じて俺からも唇を寄せた。
軽いのじゃなくてさっきみたいな舌を擦り合わせるキス。濡れた音が静かな部屋に響く。このキスは、興奮を煽るためのものみたいに思える。
キスの最中、寒河江くんの手が俺の胸を撫でてきた。そこに膨らみはありませんよと思っていたら指の腹で乳首をくにゅくにゅ押された。

「……ここ、どうです?」
「え?うーん……くすぐったい?」

軽く摘まれたり捏ねられたりしたけれど、くすぐったくて笑いがこみあげてきてどうしようもない。
それでも寒河江くんは笑ったりせずに別の場所を優しく撫でた。背中や、わき腹を。マッサージみたいで気持ちいい。
そして彼が、俺の首のところにチュッと口付けた、そのとき――。

「ん……っ!」

ビクッと肩が跳ねて、ついでに鼻にかかったような変な声が出た。

「……センパイ、首んとこ気持ちいいですか?」
「えっ?き、気持ちよくはないけど……なんかムズムズする」
「ふーん……?」

さっきもそうだったけど、首のあたりにキスをされるとぞわぞわというかムズムズというか、背中を這い上がるような感覚に襲われる。
寒河江くんはうっすらと笑って――ちょっと嫌な予感のする笑みだ――首筋に吸い付いてきた。

「あっ、ちょ、さ、寒河江くん……!」

ちゅうちゅうキスしたり舌先でなぞったりと、寒河江くんがそこをしつこく攻めてくる。背中に腕を回して俺を逃がさないようにしながら。
俺は気持ち悪いことにそのたびにビクビクしながら声を上げた。だって声が出ちゃうんだもんしょうがないじゃん!

「やっ、やだって、それ、……んっ!」
「感じます?」
「んんっ……?と、とにかくやだ!」

ムズムズは次第にゾクゾクに変わった。寒河江くんの肩を掴んで引き剥がそうとしても手に力が入らない。もう腰砕け。
喉仏のところにかぷりと優しく噛み付かれると、なんだか全身の力が抜けた。
まだかろうじて向き合っているけれどフニャフニャになっちゃった俺。それを支えてくれた寒河江くんは、耳元にキスをしながら色っぽく囁いてきた。

「……ね、センパイ。オレのヘソんとこ、触って」
「え……?」
「オレね、そこが感じるんです」

だから触って、と言いながら俺の手をピアスの埋め込まれた場所へと導いた。海のときみたいに。
平らで硬く締まった腹。そこにあるピアスを指先でそっと撫でると、寒河江くんが「んっ」と声を上げた。痛みに悶える声音じゃなくて、うっとりとしたような声が俺の耳奥に響く。
ここ、異物が埋め込まれてるせいで敏感になってるのかな。俺がピアスのあたりをなぞるたびに寒河江くんの唇から熱い吐息が漏れた。

俺でも彼を感じさせることができるんだと思うと嬉しくなった。
そうか、相手が気持ちいいと嬉しいんだ。だから俺も、気持ちいいことはちゃんと伝えたほうがいいんだ。慣れないからすごく恥ずかしいけど。

「……こっちも」

寒河江くんが俺の手をピアスより下に導いた。そこは硬く盛り上がっている。
それは、その、あの、男の大事な部分で、硬いってことは興奮しちゃってるってことだよね?

「無理ですか?」
「だ、大丈夫……」

そろそろとそこを摩る。ピアスにしたみたいに撫でたりなぞったり。ズボン越しでもわかるくらい立派に育ってるんだけど、寒河江くん。
そうしたら寒河江くんも俺の股間に手を這わせてきた。勃っちゃってるのバレたよねこれ。今更だけど恥ずかしくて死にそうだ。

ズボンの上から触り合いをしながらまたキスをした。
寒河江くんに下唇をやんわりと食まれる。そうされるとすごくエロい気分になって自分から舌を差し出したら、先を軽く吸われた。そうやって交互にキスを求め合った。
しかしそんな夢見心地もつかの間、股間を触っていた寒河江くんの手が不意にズボンの中に入ってきたから、驚いて目を見開いた。

「んむ……ッ!?」

寒河江くんの手が腰を撫でながらトランクスの中にまで侵入してくる。その手は躊躇うことなく下の毛をかき分けてキュッと握った。何をって、ナニをだよ!


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