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体育祭の練習や打ち合わせとかであっという間に日は過ぎていった。

全校生徒対象の順位予想ゲームの参加は、最終的に全生徒の約四分の三だった。――思ったより多かったな。
投票箱は体育祭が終わるまで職員室の金庫で預かってもらうことにした。お遊びでも公正にやらなきゃ村岡先輩たちを説き伏せた意味がない。
さすがに体育祭直前は生徒会も風紀も三春に構ってられないのか通常業務に戻っていた。





そして、やってきました体育祭。晴天に恵まれた体育祭日和。快晴すぎて雲ひとつない晴れっぷり。

体育祭――それは全校生徒が熱くなる行事。……だと思ってるのは一部の生徒だけ。
去年参加してわかったんだけど、高等部の体育祭超怖い。身体が出来上がってない中等部の運動会とはレベルが違う。
祭じゃなくて戦だよ戦。去年は白熱しすぎて病院送りになったのが四人。これは例年より少ない方だったらしい。

それもこれも、運動部が体育祭にかなり力を入れているせいだ。運動部同士で水面下の睨み合いがあるから毎年病院送り続出の熱戦になるわけだ。
まあそういう背景もあって演劇部の賭けが膨れ上がっちゃったんだけどな。「俺らのチームが勝つ!」っていう意地の張り合いのせいで。

さてこの体育祭、チーム分けは学年混合のクラス単位で行われている。
俺と龍哉の2−Bはきつねチーム。千歳、若林、滝のいる2−Aはくまチーム。
ただしS組だけは例外でクラス単位じゃなくて個人単位でばらばらに編成されている。そもそもS組はクラスの人数自体が十人前後と少ないからそうしないと偏りが出てしまう。

そしてそれぞれのチームの大将には生徒会役員が割り当てられている。
とりが生徒会長、いぬが副会長、うさぎが仁科、くまが後藤、きつねが有栖川兄、ねこが有栖川弟、といった具合だ。
ちなみにこのファンシーなチーム名は有栖川弟発案なのだと仁科に聞いた。去年は戦国武将の名前で硬派だったのにえらい落差だ。

しかしそんなかわいい名称でもチーム旗は結構すごい。毎年各クラスの体育祭実行委員が作るんだけどマジすごい。
俺は開会式前のグラウンドに入った瞬間、ぐるりと周りを見回した。

とりチーム(青)の旗は青空を滑空する鷲の絵が描かれている。どこの画伯が描いたんだってくらいの精密画。

いぬチーム(黄)は地獄の犬ケルベロスが涎を垂らして黄色い頭蓋骨を咥えている図。製作陣にメタルで反骨精神溢れてるヤツがいたに違いない。

うさぎチーム(赤)は一転してピンク地にポップな絵柄。でも鎌を持ってにやりと笑ったウサギの口から血が出ていて得体の知れない恐怖を感じる。

くまチーム(黒)は野生丸出しのツキノワグマが牙をむいているやたら迫力のある黒ベース地の旗。

ねこチーム(白)はもはや猫ですらない、ホワイトタイガーだ。猫科だからって何でも許されると思うなよ。でもカッコイイから許す。


そして我らがきつねチーム(緑)だが……熱湯を注がれてるカップ麺の絵なんですけど。

み、緑はたぬきじゃないんですかね!キャッチフレーズ『きつねよ熱くなれ!』じゃねーよ!うまくねーから!
完全に悪ノリの産物だ、死ぬほど浮いてる。めちゃくちゃ絵が上手いからなおさらだ。ふっくらしたおあげが乗ったうどんうまそう……なんという労力の無駄遣い。
なのに別チームにはやたら好評の様子。うちの学園の生徒は意外とカップ麺好きが多いことが判明した。


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