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俺が探していたのは、情報屋のシラタマ。
そしてシラタマと聞いてふと引っかかったのは、飼育小屋だった。たしか白玉っていう名前の白ウサギがいたなぁと。うまそうな名前だったから覚えていた。鬼頭が胸に抱いているウサギがまさにそれだ。

なにかしら手がかりが見つかればいいなぁと思って来たのが、まさかのビンゴだったとは。

「っと、勘違いすんなよ。オレだけじゃねぇ」
「?」
「まあ少なくとも三人はいる」
「あー……へぇ……」

一匹狼の不良改め情報屋・シラタマ、鬼頭要一。
いや、三人いるって言ったからシラタマは情報屋組織ってことか。

「で?何が知りてぇんだ」
「……親衛隊の制裁について」

若林の件は決着がついたとはどうしても思えなかった。そして、もしかしたら俺にもついに制裁が来たのかもしれない。
なくなったシャツは、やっぱり俺の勘違いなんかじゃなかった。たぶん誰かに盗まれた。でもいつどのタイミングでなくなったのか思い返しても見当がつかなかった。
これが制裁の一端なのだとしたら――やはり、知っておきたい。

親衛隊の実態、制裁のこと。
陰湿なやり口のイジメ。そして風紀委員会の書類の監査で嫌というほど知っている、未遂も含めた強姦被害。俺はともかく若林がそんな目に遭わないとも限らない。だからこそ脅威の芽は摘んでおきたい。不測の事態に備えたいんだよ。

鬼頭はそれらの俺の説明を鼻で笑った。

「そりゃあ頼み方が間違ってんなァ」
「なんだよ、土下座でもしろってのか?」
「そういう意味じゃねぇよ」

腰をかがめて鬼頭が白玉を地面に解放する。
ピョンピョン跳ねるウサギを目で追っていたら急に胸倉を掴まれた。

「情報収集の初歩を教えてやらぁ」
「……は?」
「別々に考えろ。全部一緒くたにすんな」

間近に鬼頭の凄味のある顔が迫った。
別々に考える?何を?

「……どうだ、頭ァ冴えたか」
「いや……」
「案外てめぇってヤツはバカなんだな。……まとまったら連絡しろ。オレらのうちの誰かが応える」

そう言って鬼頭は懐からメアドの書かれた紙を出し、俺の胸ポケットに捩じ込んだ。
そして俺の胸倉を解放して飼育小屋の出入り口の柵を潜った。
体を左右に振るガラの悪い歩き方をする鬼頭の背中に、ひとつ疑問を投げかける。

「……あのさ、昨日言ってた『三春に近づくな』ってどういう意味だよ」

鬼頭がちらりと俺を振り返った。

「オレの依頼人が気にしてたんでな。ちょっとしたお節介ってヤツだ」
「依頼人?」
「――仁科天佑」

喉が詰まる。
鬼頭は言葉を失った俺を一瞥して、ゆらゆらとその場を去っていった。



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