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演劇部の部室を出て監査室に戻りぐったりと椅子に沈み込む。俺の側で田中先輩とミネ君が手に手を取り合ってはしゃいでいた。

「わ〜怖かった!緊張しちゃったよ〜」
「おれもっす!でも志賀先輩かっこよかったっすよ!!」
「どーしていつも俺がこういう役回りなの。ありえねーんだけど……」
「だって先輩に言い切られると逆らえない雰囲気っていうか、従いますーってなりますもん」
「うんうんそれわかる。僕じゃ怖くて逆に勢いで負けちゃうし……」

どんなだよ。まあおっとりした田中先輩と噛みまくりのミネ君じゃああいう取引は荷が重いかもしんないな。
とにかく懸念材料はひとつ減った。俺は椅子の背に凭れかかって大きな息を吐いた。
滝に電話して任務完了の一報を入れる。これで風紀のヤツらが返金作業に応じてくれる手はずになっている。
俺たちの仕事はとりあえず終わった。



滝に連絡をしたあと、俺は探し物をしに校舎から離れた場所へと足を向けた。

広い学園内のなかでもかなり端っこにあるその場所――飼育小屋だ。
飼育小屋といっても敷地はゆったりとしていてちょっとした小動物ふれあいランドのようになっている。
そこには鶏だのアヒルだのウサギだのチャボだのクジャクだの……とまあバラエティー豊か。
僻地にあるこの学園は山林も近く、そこからこいつらの餌を狙って野生の狸やリス、ハクビシンまで姿を現す始末。

柵で仕切られたそこに足を踏み入れると、誰かの姿が見えた。背中を丸めてウサギにぶつ切り人参を与えている。
誰かがいることはあまり期待してなかったが……俺の予想は的中してたんだろうか?

「……よー」

俺が短く声をかけると、そいつが振り返る。
――それは真っ赤なリーゼントに学ラン姿の鬼頭要一だった。
胸に真っ白なふわふわ毛のウサギを片手で抱えている。どう見てもこれから皮剥いでバーベキューにしようとしてる図なんだけど。

「えっと……なにお前、動物好きなの?」
「……んなわけねぇだろ」

あ、ウソだ絶対ウソだ。だって抱っこしたウサギのお腹モフモフ撫でてるし。
どう話を切り出したもんかな、と迷っていると鬼頭が立ち上がった。
威圧感のある長躯を反り気味にして立つ姿はモロ不良。その胸のウサギさえいなけりゃな。

「……なんか用か?あぁ?」
「や、俺が用あるのはそっちかな」

言いながら鬼頭の胸に抱かれたウサギを指す。鬼頭が鋭い犬歯を見せながら凶悪な顔でニィ、と笑った。

「じゃあオレに用ってことだなァ」
「……マジかよ」

呆然と鬼頭の顔を見つめる。これは予想外。


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