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生徒会と風紀のこの自意識過剰っぷり。そしてそれに踊らされる生徒たちもなんだかなぁ。
まあ奴らは芸能人みたいなもんだからさもありなんとは思うが。男同士だけど。

それにちょっとした勝算もあった。村岡先輩は超熱心な生徒会長親衛隊員なんだよ。
しかし、予想外の発言が他部員から上がる。

「……そ、それは監査委員の皆様方も対象になるんでしょうか?」
「あ?んなわけねーだろ」

おずおずとした質問を切り捨てると一気にブーイングが起こった。
まあ田中先輩は癒し系美人だし、ミネ君も喋るとワンコみたいで可愛いけど黙ってるとカッコイイから狙ってるヤツは多いだろうな。
俺は背後にいる二人を順番に見た。田中先輩は面白そうに笑いながら頷いて、ミネ君はグッと親指を突きたてた。OKなのか、二人とも……。

「あーもーわかったよ。監査委員もアリ!俺が責任持って話通しとくよ!」

ヤケクソ気味に言い捨てると、わあっと歓声が上がった。
お前らマジでいいのか、しつこいようだが全員男だぞ?

「副賞はピタリ賞、ニアピン賞につけるけど、あんまりにも数が多かったらピタリ賞優先。それ以下は抽選。デート内容はそれぞれにお任せするけど、基本こちらがエスコートする形になると思う」
「……お触りとかは」
「それは本人に頼んでみな。いい子にしてたらサービスしてくれるかもよ?」

ちょっと期待を持たせるように言ってみれば、奴らはザワザワとした。なんとなくうきうき?してるのが見て取れる。

「ちなみにデート権いらないヤツは図書カードになるから。お目当てがいなくても大丈夫。どうだ、飲めるか?この条件」

うぐ、と村岡先輩が言葉に詰まる。

「飲めないならしょーがない。これな、執行部も風紀も全部承知のことだから。つまりさ……あんたら個人をぶっ潰すことになるけど?」

正直これは最終手段だった。まだ未遂とはいえ金銭を集めて賭けをしていたことはかなり外聞が悪い。良くて謹慎、悪くて停学だろう。
家の力で隠蔽しようにも、執行部と風紀相手じゃ分が悪い。
大人しくこっちの言いなりになったほうが楽だぜ?と甘い誘いをかける。

村岡先輩は視線を忙しなく彷徨わせて、そしてついにがくりと項垂れた。

「……わ、かり、ました……」
「よし話は決まった!じゃー賭けに参加したヤツには全員返金するからな。明日の昼、今述べたことを校内放送で通達する。以上」

これ以上の異論は認めないと言い切ると、村岡先輩以下賭けの首謀達は観念したように黙り込んだ。
俺は、そんな村岡先輩にひとつ気になっていたことを改めて聞く。

「それで?そんなに金集めて何しようとしてたんです?」
「……ドレス、が」

ヤケクソ気味に村岡先輩が吐き出す。ドレス?

「今年の文化祭で……ローブ・ア・ラ・フランセーズが着たくて……」

ローブ……なんだって?
聞きたくもないけど勝手に説明してくれたことによると、今年の文化祭の演目で中世貴婦人が着るようなフリッフリのドレスを使いたかったらしい。
もちろん他の部員の衣装もそれに合わせて本格的に揃えたかったのだとか。そりゃもうヴェネツィアのカーニバルばりの豪華絢爛さで。
海外の本場の衣装職人に特注したいが予算が圧倒的に足りなかったらしい。

そんなことで振り回されたのかと思うとものすごい脱力感。
諦めて予算内の現代服でやってくれ……。




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