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生徒会室前には、やはり親衛隊警備の生徒がいた。今日も三人。今更気付いたけど三人体制が基本なのか?
しかし彼らは生徒会室の中をしきりに窺っては異様にハラハラしていた。

「すいません、監査の志賀ですけど」
「あっ!?は、はいどうぞ!」

俺が声をかけると警備の小柄な可愛い男子たちが三人とも慌てて姿勢を正し、ぴしっと直立して道を開けてくれた。
入り口の暖簾というかカーテン?をくぐると中には仁科と、もう一人いた。

――え、滝?

二人は無言で互いに視線を外し、応接テーブルを挟んで差し向かいに座っていた。その空気がなんていうか……すっげー険悪。
なんと声をかけるべきか迷っていたら、仁科が俺を見つけて一転、ぱあっと笑顔を撒き散らした。

「志賀ちゃんおっそーい!いらっしゃ〜い!」
「志賀……」

滝のほうもこっちを向いてふっと表情を緩めた。
滝、さっきの中庭の騒動で風紀の群れの中にいなかったのか。てっきりいるもんだと思ってた。
曖昧に返事をしながら二人が座っているソファーへと近づくと仁科が唇をアヒルみたいに尖らせた。

「もー俺ちょー待ってたんだよぉ。何してたの〜?」
「野暮用。ってかなんで滝いんの?」
「俺は委員長の代理。ほら、風紀から依頼した件だから一緒に話聞かせてもらおーと思って?」
「志賀ちゃんだけにしか言いたくなかったのにぃ、シラタマがさぁ口滑らせて風紀にまで伝言しちゃうんだもん、チョームカつくー」
「生憎シラタマは風紀のが優先だったから。むしろ執行部の方がオマケだし」

しらたま?誰それ。
俺がぽかんとしながら立ちすくんでいると、仁科はニコニコしながら自分の隣を軽く叩いた。

「志賀ちゃん隣、隣座ってぇ」
「やだ」

速攻で断ると滝が噴き出した。仁科が「ガーン」と言いながら変な顔をする。

「んじゃあお前俺の隣来れば〜?」
「つーか俺ここに座るから。そんで、話は?さっさとしてくんね?」

滝の誘いも断って下座にある一人掛け用のソファーに座りながら先を促す。
今は俺たち三人以外誰もいないが、他の役員が戻ってきたら余計ややこしいことになりそうな気がするから早く済ませて欲しい。

仁科はまだ不満げな顔をしながら自分のデスクに行き、鍵付きの棚から白いA4封筒を取り出した。それを俺に手渡してくる。

「はい、これねぇ」
「なにこれ」
「シラタマの極秘資料〜」

だからさっきからその『しらたま』って何?そんな名前のヤツがいんの?
……とは思ったけど、とりあえず封筒の中身が気になったからまずは中をのぞいた。そこには数枚の紙が入っていた。

「……これ」
「んふふ〜どーお、キスしてくれる気になった?」
「いやなんねーけど……マジ?」

滝も顔を寄せて俺の手元を覗き込んでくる。そして眉間に皺を寄せた。
ずらりと並んだ文字の群れ。仁科が得意げな表情を浮かべている。

「じゃ、作戦会議しよっかぁ?」

仁科の顔が、ありえないほど悪そうな表情に様変わりした。





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