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友達には戻れないけど、勘違いさせるような言葉も胸に痛いけど、でも、仁科に悲しまれると俺もつらい。
突き放したのは俺の方なのに、ほんと勝手だよな、俺。
「ごめんね志賀ちゃん……」
「なんでお前が謝ってんだよ」
「色々と」
俺は無言で頷いた。どうしてか、今日は素直になれる。
「ところでお前一人で業務やってたの?」
「んー、うん……」
「なんで?他のヤツは?」
「わかんない。授業じゃない?」
「お前ら授業とか出んの?」
「当たり前じゃーん。でも俺はサボりも兼ねて溜まった書類片付けてたんだぁ」
「そか。お疲れ」
「志賀ちゃんに嫌われたーって思ったら夜眠れなくってさぁ。ここで書類とにらめっこしてるとよく寝れるからー」
「なんだそれ」
まさかの理由に俺は目を見開いて仁科を見下ろした。
仁科の綺麗な顔と、正面から視線がぶつかりあう。
心臓がドキドキとした。あーヤバイ。やっぱ好きだ。
「志賀ちゃん……ちゅーして」
「…………」
子供のように強請られて、俺は迷った。
どうしても仁科とキスはしたくなかった。でも請うような強い視線が俺を揺さぶる。
「お願い」
「……や、ちょっと、それは」
「志賀ちゃん……」
俺は迷った末、仁科の滑らかな額に唇を落とした。
顔を上げると不満そうな仁科の表情が目に入った。
「けち」
「うっせー」
「バカー」
「それはお前だ」
「すき」
「は?」
思わず聞きなおすと、仁科が俺の反応を試すかのような人の悪い笑みを浮かべていた。
コイツ絶対からかってやがる。
眉間に皺を寄せて仁科の頭を叩いた。
「ばーか」
「うん」
仁科がまた俺の腰に抱きついてくる。それは、温かく、力強い腕だった。
第二章 END
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