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萱野が麗しい顔を曇らせて、ふぅ、と息を吐いた。

「……過激派なのはむしろ個人の親衛隊の方じゃないかなぁ」
「え、千歳とか……?」
「志賀ちゃんの親友の各務君?各務君は真面目に親衛隊を統制してると思うよぉ。むしろあそこは体育会系っていうか、絶対服従が売りっぽいし」
「そ、そうなんだ。ツレなのにその辺のこと全然知らなかったわ」
「志賀ちゃんは親衛隊とか興味ないもんねぇ〜」

からかうように言われて顔が熱くなった。
だって俺には無縁の組織だし。いや、俺自身に制裁が来るかもとは思ってたけど完全に気抜いてた。

「……それか、親衛隊の制裁を装った個人の暴走って線も考えられるよね」

言われてハッとした。そうか、そういうこともあるのか。
一人で突っ走っちゃって恥ずかしいな俺。

「うわー俺超バカすぎ……そういう可能性だってあるよなぁ」
「まぁでも、こうやって引っ掻き回した方があの子……若林君だっけ?安全だと思うよぉ。志賀ちゃんが派手に動いてるって知ったらしばらく大人しくなるでしょ」
「そうかな……そうだといーけど」
「志賀ちゃん顔真っ赤」
「やめろ見るな!俺いますっげー後悔中だから!」

萱野が口元を手で押さえて上品に笑う。
その様は本当に女子みたいだ。

「クラブに入ってる子なら志賀ちゃんを敵に回すの怖いだろうしねぇ。このままあの子のイジメなくなればいいけど」
「ほんと便利だな監査委員って」
「やだな〜それだけじゃないでしょ。みんなのキスフレの志賀ちゃんをないがしろにして回る敵の大きさを知らないわけないし」
「は?え?」
「志賀ちゃんが怒ってるならぁ、僕もムカつくってこと。もちろん仁科様もね」

仁科、の言葉に俺は表情が固まってしまった。

萱野が目を細めてチェシャ猫みたいに笑う。

「……あのね、ちょっとお願いがあるんだけど」
「え?なに?」
「今から一緒に生徒会室に行ってくれる?」

萱野の言葉の意味を図りかねて顔を顰めた。

ちゅ、と頬に萱野の肉厚の綺麗な唇が触れる。



「仁科様がね、大変なの」






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