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椎名はさらさらの黒髪と穏やかな表情で優しいお兄さんって印象が強い。

実際、中学のときに一年間アメリカに留学してて、その間休学してたから同学年だけど年は一つ上だ。

俺も最初は敬語で話してたけどそのうちどうでもよくなって、今じゃ普通にタメ語になった。

椎名とあんまり付き合いないヤツは一線引いてる感じがするけど。

高等部からの外部生は椎名を同い年だと疑いもしないと思う。

「あれ、志賀来てたんだ」
「お邪魔してまーす」
「あ、ギャンプ?見つかった?」
「あったあった。つかまだ読み終わってないし借りてっていい?」
「いいよ」

にっこりと優しく笑う椎名はマジイケメンだ。

龍哉は食事のゴミをさっさと片付けていた。
俺の分もきっちり片付けてくれる気回しはほんとすげーと思う。

あとは部屋が綺麗だったらなぁ……。

「じゃーまた明日」
「おー。課題やっとけよ」
「はいはい。椎名もまたな。明日くらいには漫画返すから」
「俺は読み終わったしいつでもいいよ」

部屋から出て、俺は自分の下半身を見た。

うーん、ちょこっと反応しちゃってるのどうしようかなぁ。


自室に戻ると若林はもう自分の部屋に引っ込んでるらしく姿が見えなかった。
俺も自スペースに戻って久々にヌいたら結構な量が出てびっくりした。

仁科の手の感触を思い出してしまってなんか空しくなった。





翌日朝は俺が朝食を作った。

いつものトーストと、スクランブルエッグとベーコン。インスタントのスープとサラダもつけた。

「簡単でわりーな」
「全然。うまいよ」
「そう?」

朝食のあとは俺も若林も部活に入ってないから一緒に寮を出た。
一人のときと違ってちょっと早起きしたから、余裕の登校だ。

「若林、荷解き進んだ?」
「やってない。昨日は飯食べて風呂入ったらそのまま寝ちゃったし」
「まあ疲れたよなぁ。俺もおんなじ感じ。今日提出の課題あったのに結局やってねーし……あ、椎名おはよ」
「おはよう」

昇降口近くで部活途中っぽい椎名とすれ違った。

椎名は龍哉と同じ吹奏楽部だ。フルート担当だとか聞いたことがある。

椎名を囲むようにして小柄な可愛い系の少年たちがぞろぞろと歩いてたから身長のある椎名はやたら目立った。

「昨日はさんきゅ。もう朝練終わり?」
「パー練終わってこれから合わせだよ。体育祭近いからみんな気合入れてるんだ」

吹奏学部は行事ごとに演奏するから年間通して忙しいらしい。
定番のクラシックから最近の邦楽まで幅広くカバーするから練習量が半端ない。

俺も監査で何度か練習風景を見に行ってるけど、練習とはいえいつも本番さながらの真剣さだ。

「フーン、頑張って」
「ありがとう」

イケメンスマイルでそう言った椎名に周りの可愛い系少年たちがキャーと黄色……黄土色の声を上げた。

いや、もうなんかすごいな……。

若林も同じことを思ったのか複雑な表情してた。
無表情なんだけど目元がピクピクしてる。





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