33
食べ終わってから龍哉が何も言わずに冷蔵庫からアイスを出してくれた。
俺が好きなアイスをストックしてくれてるあたり、龍哉はマジでいいヤツ。
「あーそうだ、漫画どこ?」
「たしかその辺に……」
「この辺?」
「そうそうそのあたり」
「お前らガチで片付けろよな。そのうち腐海出来上がるぞ」
積み重なった雑誌の中間あたりに目当ての漫画があった。
引き抜いたら雑誌タワーが崩れたけどそのままにしといた。
今更これ以上汚れても関係ねーだろ。
テレビを見てる龍哉のそばに行ってその背中にもたれかかった。
龍哉も何も言わずに俺の体重を受け止める。
背中合わせで静かに漫画を読んでると「なぁ」と龍哉の声がした。
「理仁、明日の数学の課題やった?」
「やってねー」
「俺も」
そう言ながらも、明日までに龍哉はきっちり課題を終わらせてきて俺に見せてくれる。
龍哉は本当にお人好しだ。
「なー龍哉。どーしてお前はそんな優しいわけ?」
「は?別に優しくないって」
「そーかなー……」
気遣いのスキルが半端ないと思うんだけど。
俺が女だったら絶対龍哉を旦那にするね。
それくらい優しいやつだ。
漫画に集中したからそのあとは黙ったんだけど、突然背後の背もたれがなくなった。
「う、おっととと!」
無意識にかなり体重をかけてたらしく、俺はバランスを崩してフローリングに倒れこんだ。
ちょっと頭打って痛い。
「……ってー。急にいなくなるなよ龍、哉……?」
頭を擦りながら文句を言うと、龍哉の顔がすぐ上にあった。
体勢だけ見れば押し倒されてる形っていうか。
「なに?」
「別に優しくとかねーから」
「そ、そうすか……」
そして龍哉は俺に顔を近づけてきて唇を重ねた。
ビクッと体が跳ねてしまってちょっと恥ずかしい。
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