30

俺も千歳もさすがにスウェットのままなのが気になって、それぞれ一旦部屋に帰り労働の汗を流して仕切り直しすることになった。


若林と部屋に残って、シャワーを軽く浴びてからようやく着替えた。
テレビをつけてスポドリを飲んでいると、若林がもじもじしながら再びお礼を言ってきた。

「志賀君、マジで助かったよ、ありがとう」
「だからー、もうそういうの言わなくていいって。まあ一日で済んで良かったんじゃね?や、まだ荷物残ってるけど」
「あれくらいもう俺一人で平気だし。てか、あの……さ、志賀君ってさ……」
「ん?」
「なんか思ったより……フツーだね」
「え、なになにどゆこと?」

言ってしまってから「しまった」と思ったのか、説明しづらそうに若林が体を揺すった。

「ほら、ここって結構お金持ちっていうか、セレブの集まりじゃん?俺んちってサラリーマンの一般家庭だし、むしろ貧乏寄りで高等部からの外部生だしで、なんか今まで他のヤツと話合わなかったんだけど、なんか志賀君はノリが近いっていうのかな……ってごめん、変な意味じゃないんだけど」
「あーだってうち、確かにちょっと金はあるかもだけど成金だから根っこは庶民なんだよね。小学校だって公立だったし。回転寿司とかジャンクフードも家族全員大好き」
「そうなんだ」
「それ言うなら千歳だってスゲー金持ちの家ってわけじゃねーよ?スポーツ特待生で中学から一緒だけど、全然庶民。そういう意味じゃ俺らの中じゃ龍哉が一番セレブかも。両親俳優だし」

ぽつりと漏らすと若林が目を見開いて驚いていた。

「えっ……え、大友君ってもしかして大友竜造の息子?」
「そーそーよく知ってんじゃん」
「あーだからあんなカッコイイんだ……」

遠くを見るような目で若林は一人で頷いてた。

龍哉は千歳みたいな派手さはないけどすごく顔立ちが整ってるし、姿勢がいいから結構目立つ。
ただお人好し過ぎるのが難点といえば難点。

「まあ超金持ち!みたいなのはやっぱ一握りだろ」
「俺この学園に一年いてもその辺全然知らなかったな」
「わかんなくて当然じゃね?中学からずっとツルんでるとこに外部生って入りにくいだろうしね。それでなくても色々特殊だから、うち」
「それは知ってる。去年とかわけわかんなくて超ビビった」
「ずっといる俺でも『そんなんアリ!?』ってこと未だにあるもん。そうそう第二体育館のステージに何故か迫りがあってさー、何年も使ってなかったらしいんだけどそこで遊んでたバカが問題起こして初めて奈落の存在知ったんだよね。誰がそんな仕掛け作ったんだよなぁ。んでそれ知った会長が、次の挨拶のときに使うってチョー張り切っててさー」

ステージ下から迫り上がる会長の姿を想像して俺が笑い転げると、若林も口の端をちょっと持ち上げた。

そのときちょうど軽いノックの音のあと部屋に龍哉が上がり込んできた。

「よー何盛り上がってんの?」
「お、来たか龍哉。千歳は?」
「あいつ先に行ってるって」
「りょーかい。じゃあ行こっか、若林」
「うん」





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