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心底三春は理解不能だ。やっぱり芸人の類なんじゃねーか?

「会長とかヘタレだからなぁ……グイグイ押されたら断りきれなそう」
「ヘタレ?」
「え?」
「誰が?」

俺の言葉に三人が過剰反応する。
え、なんか変なこと言った?

「生徒会長。偉そうにしてるけど超ヘタレじゃん」
「え、どの辺が?」
「どの辺も何も、あの人すぐ謝ってくるし」

三人が驚愕の表情を浮かべた。なにその反応。
あれっ、もしかしてみんな知らないのかよ!?

……ふと、会長のことから全体像が見えてきた気がした。

「もしかしてさー、会長のことが心配で副会長も一緒にいるんじゃねーの?あの二人なんだかんだで幼馴染みらしいし。んで、庶務の兄の方はたぶん面白がってんな。同じ匂いでもすんじゃねーの?弟はその兄の暴走ストッパーで引っ付いてて、書記は……弱味でも握られたか?三春声デカそーだし」

ただの偏見まじりの想像でしかないけどなんとなくしっくりきた。
俺が一人で頷いてると三人とも同じような複雑な表情で見つめてきた。

「詳しいな、理仁……」
「まあ監査委員やってりゃ嫌でも時々は関わるからな」
「……仁科は?」

龍哉に言われてハッとする。
無意識に思考から追い出していた人物を思い出して眉間に皺が寄った。

「仁科は……わかんねー。つか、あいつも三春にくっついてんの?」
「……いや、仁科は全然。うまく三春のことかわしてるっぽい」

それを聞いて俺は思わずホッとしてしまった。
それが顔に出てたのか、千歳に少し真剣な顔で聞かれた。

「あのさ、お前と仁科ってなんかあったの?」
「なんかって何」
「喧嘩とか……」

言いづらそうに口を開く千歳が少し憎らしい。そんなことは聞いて欲しくなかった。

「喧嘩……みたいなもんだよ。悪いけどそれ以上は言えねー」
「そっか。去年あんだけ仲良かったっぽいから何かあったのかなーって思ってたわ」
「え、仁科って生徒会会計の仁科天佑?志賀君って会計とも仲いいの?びっくり」

事情を知らない若林がぽかんと口を開いて俺を見上げてくる。その様子に苦笑が漏れた。

「仁科とは去年同室だったんだよ。あいつが正式に生徒会入りしたから特別棟の個室に移って、俺は一人部屋になったって話」
「へーそうなんだ!やばい、すごいな志賀君」
「なんもすごくないって。その話はもーおしまい!んで若林はどーすんの引越し」
「あ、なんだ、引越ししたつっても荷物はまだ持ってきてないんだ。なんなら俺ら手伝うし。四人でやればあっという間っしょ」
「俺もメンバーに入ってるんだ……」

龍哉が苦笑する。むしろなんで入ってないと思うんだよ。

若林は少し目を泳がせて迷ってたが、「ごめんお願い」と頭を下げてきた。


ちょっと心の距離が縮まったみたいで俺は嬉しくなった。





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