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若林の姿を見て千歳が驚いたように目を丸くした。

「え、あれ、若林?なんでここにいんの?」
「こいつさー、昨日から俺の同室者なの」
「え?なんで?だって三春と同室だったんじゃ……」
「引っ越したんだよ。つか、そのことで俺はお前を呼び出したんだよ!」

わけが分からないといった顔をしながら千歳も龍哉もテーブルを囲んで座った。

俺は二人のために昨日からのことをかいつまんでざっと説明した。
一通り聞くと、千歳は悲しそうな顔をした。

「あの、ごめんな?俺かばいきれなくて、つか結局騒いじゃって迷惑かけたよな……」
「い、いーよ別に」
「でも理仁んとこに移ったんなら安心だわ。ほら、俺も若林の気持ちわかるからさ」
「え?」

千歳の言葉に首を傾げた若林に俺はピンと来た。

「若林知らねーの?コイツちょーオタクなの。アニメ見てるときに話しかけるとスゲー勢いで睨まれるから!二次元嫁?とかいるし、たぶん若林の方が優しいわ」
「えっ、各務ってアニメ好きなんだ。へー意外……どんなの見るの?」
「今期は『辛フリ』が俺的ヒット。永遠の嫁は『マルヒ』のななも」
「マルヒ俺も見たことあるよ。劇場版も見に行ったし。嫁とかはないけどフツーにクオリティ良かったから好き。俺今期は『武士師』が一番かな」
「ああ、アレ一期良かったよなー。てかやべー若林詳しいじゃん」
「ちょっとだけね。俺基本アニメより本の方が好きだし」

一気にオタトークで盛り上がる千歳と若林に俺と龍哉置いてけぼりでちょっと疎外感。

「俺全然ついてけないんだけど……」
「まあ誰だって趣味を楽しんでるときくらい邪魔されたくないよなぁ」

龍哉がやんわりとフォローする。
少し盛り上がってた千歳は、その言葉でまた落ち込んでたみたいだった。

「あーマジでごめん若林」
「もも、もういいって!各務には結構感謝してるしさ……」

またなんか恥ずかしいようなむず痒い空気になってきたのを察して、俺は誤魔化すように次の話題に移った。

「んでさー、千歳どうなの三春は。お前なんか連れまわされてんだろ?」
「あーね。つか三春ってさ、よく言えばポジティブ、悪く言えば強引なんだよな」
「へえ?」
「なんかさー、よく分かんないんだけど俺が友達いない認定されててさ」
「え、ごめん意味わかんないんだけど俺らと千歳っていつダチやめたの?」
「だからぁ、あいつが勝手にそう思い込んでるらしいんだよ!ただなんかあいつに悪気がないっていうか……うまくペースに乗せられるっていうかでさ、ごめんちょっと言葉にしづらいんだけど……」

情けなく千歳が眉尻を下げる。龍哉はもうその話は聞いてるらしく、勝手にキッチンに行って全員分のコーヒーを用意してた。

「生徒会に気に入られてるってのはなんなの?俺としてそれが一番謎なんだよ」
「それな。三春ってやたらと行動力あるんだよ。それでなんか引き回されてるっていうの?生徒会の奴らってさ、色々とスゲーじゃん。それで興味持って仲良くなりたいらしくて」
「お、おぉ……体を張ったギャグだな……」




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