25

俺が色々と頭の中で算段してると突然若林が黙り込んだ。
ずいぶんとぼんやりしてるから俺は若林の目の前で手を振った。

「若林?」
「あ、や、なんでもない」

若林は昨日から時々こうして黙ることがある。
なんか気にかかってることでもあんのかな。

でも友達いないとか言うわりに結構喋る方だよな。
干渉してほしくないタイプ?いまいち距離感がわかんねー。

「あ、そーいや引越し俺手伝おうか?今日やっちゃえば良くね?」
「え、いいよ」
「見られたくないものあんなら触んねーし安心しろよ」

ニヤニヤしながら言うと、若林がちょっとムッとした。

「いらないって」
「えーじゃあ一人でやんの?231って結構遠くね?人手あった方がいいだろ。つか三春は昨日から引越しってこと知ってんの?」
「あ、や……どうかな、寮長から伝えてくれるって言ってたけど」
「……三春と何かあったのか?」

それなりに仲良かったら自分で伝えるなりするよな。それがどうして人伝なんだろう。
聞いてから思ったけど触れられたくなかった話題だったかな。失敗した。

「あーワリ、今の質問忘れて」
「べ、別にいいんだけど……たいしことじゃないし」

少し焦ったように若林が手を振った。

「……あのさー、志賀君は三春のことどれくらい知ってる?」
「そういえば実は実物見たこともねーんだよな。まあその他のとこで色々と迷惑被ってっけど」
「え、なんで?」
「俺監査委員会でさ、三春が色んなとこで破壊活動してくれるからここんとこその対応に毎日追われてんだわ。胃に穴が開きそうな勢いでな」

冗談っぽく言ったつもりだったけど、若林はさっと表情を曇らせた。
なんか思ったよりもひどいのかもしれない。

「……俺、あんま人に構われるの好きじゃなくてさぁ。つか趣味に没頭してたいっていうの?そういうの邪魔されんのうざいんだよね」
「あーそうなんだ。悪い、気ィつける」
「あっ、や、志賀君はいいんだよ。そんなガツガツ来るタイプじゃなかったし、今んとこ別に気になってないし」

無表情ながらちょっと照れたように耳を赤くした若林。
なんだ結構感情豊かじゃん。

「……なんかこーゆーの陰口みたいで気分良くないけど、三春はさ、そういうのお構いなしっていうか、放っておいてほしいのにグイグイ押し付けてきてさ」
「へぇ……」
「あの、ぶっちゃけ言うと、毎日部屋に色んな人連れて来るんだよあいつ」
「友達とか?」
「つーか、生徒会の奴らとか」
「あー……」

それはなんともご愁傷様なことで。若林にかなり同情してしまう。

若林は俺の何とも言えない気持ちを表情から読み取ったらしく、決まり悪そうに体を揺すった。

「つかなんで三春は生徒会の奴らと仲良さげなわけ?マジで謎なんだけど。ていうかあいつらと仲良くしようってとこがもう理解できねーよ」
「さあ、俺もわかんない。それで、そんな調子で毎日何人も来るからすごいうるさくってさ。俺それでプチンときちゃって」
「……なあそれ、千歳……あ、A組の各務もいたりする?」
「え?うん。志賀君、各務と仲いいの?」
「つーか俺のツレ。マジかよ何やってんだアイツ……!」

苛立ち紛れにスマホを手にとって千歳の番号を呼び出す。
すると、眠そうな声が聞こえてきた。

『あー……理仁?どした?』
「どーしたじゃねーよ千歳!お前ちょっと今から俺の部屋に来い!」
『イヤンお誘い?朝からお盛んねぇ』
「ふざけてんじゃねーよ、いいからすぐに来い!」
『わーったよ、今起きる』




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