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『理仁……りひと……』

『あっ、あっ、そこ、気持ちいっ……仁科……』

『理仁……俺のこと、名前で呼んで?じゃないとイかせてあーげない』

『んっ、あっ、てんゆっ……天佑……天佑っ……』

『かわいーね理仁……』











ぴぴぴ……ぴぴぴ……ぴぴぴぴぴぴぴ……。
うっせーな目覚まし。わかった起きるからそんな連呼するんじゃねーよ……。

「ふぁ……あ」

なんか嫌な夢を見た気がする。目覚めがすこぶる悪い。

気ままな一人部屋で誰に向けるでもなくおはようと言う。
遮光カーテンの隙間から朝の光が漏れていた。

やることもなく部屋でゴロゴロして過ごした土日明け、月曜の登校はいつも気が重い。

学校に行く前に洗濯してこうと思って、スウェット姿のまま寮の共同洗濯場まで洗濯籠を抱えていく。
夜は混むから人の少ない今の時間が俺的ベスト。部屋干ししとけば学校から帰るまでには乾いてるし。



洗濯は、寮の一階にあるランドリールームでしないとならない。
この学校はお金持ち校のわりに変なところでケチだ。洗濯機全室備え付けにしてくれりゃいいのに。

まあ洗濯のやり方がわからなくて部屋中泡だらけにしたとか水浸しになったとかいう事件が後をたたなかったせいらしいけど。
ちなみに個室の方は洗濯機があるらしい。羨ましい話だ。

しかし運動部には部室棟に別途でランドリーがあるから、その辺妙に配慮されている。

運動部の泥と汗にまみれたシャツや靴下のあとには洗いたくないしな……うん。




「ぉはよー志賀」
「おはよ、滝」

ランドリールームで顔見知りのヤツとかち合った。
汚れ物をドラム式洗濯機に放り込んで、洗剤をぶちこんでセット。あとは適当に待ってればヨシ。

滝が座ってる椅子の隣に座ると、ヤツは読んでいた雑誌から顔を上げて俺に笑いかけてきた。

「なー、昨日の夜パンツの忘れ物あったらしいぜ」
「またかよ。持ち主見つかったのか?」
「まだ。お前ここ昨夜使った?」
「使ってねー」

共有施設のせいか、パンツや靴下の忘れ物が頻繁にある。そのたびに「あいつあんなの穿いてんだ」と晒し者になるわけだ。

野郎のパンツなんて見ても嬉しくないが、嬉しい人種もいるらしいから気を付けないといけない。と、寮長が言ってた。

「ちなみにどんなの?」
「そこの籠に入ってるし見たら?」
「人のパンツなんて触りたくねーよ」

そう言いながら滝とげらげら笑ってると、ランドリーに制服姿の小柄な少年が入ってきた。
しかし手ぶらでキョロキョロとあたりを見回してる。

面倒見のいい滝がさっそくそいつに話しかけた。

「落とし物?」
「あ、はい……昨日洗濯物忘れたみたいで」
「そこの籠の中に入ってるよ」

少年は忘れ物籠を見つけると慌てて中を探った。そして取り出したのはボクサーパンツ。

「きみの持ち物見つかった?」
「は、はい……あ、僕のじゃないんだけど」
「え?」

少年がポッと頬を染める。あー……彼氏の洗濯物ね。
こんなことは日常茶飯事だから今更驚きもしない。

それ以上詮索すると聞かなくてもいいことを聞いてしまいそうな気がしたから俺も滝も曖昧に返事をしてその場をやり過ごした。

少年がぺこりと軽くお辞儀をして走り去って行く。




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