12

有栖川弟からもらったジュースを飲み干したところで、仁科の書類が出来上がったらしい。

「はーいお待たせ志賀ちゃん」
「どうも」

奪い取るように書類を引ったくり、間違いがないかざっと確認する。
……よし、大丈夫っぽい。

ついでに生徒会長印をもらってこうと会長の方を見たら、ストローでジュース飲んでた。
ってあのりんごジュースはお前のストックかよ!?

「会長、これ印ください」
「んあ?あーちょっと待ってろ」
「あと、他に監査が必要な書類出来てたらもらってきます」
「ここに出来てるよ」

副会長がにっこり笑いながら書類の束をずいと差し出してきた。相変わらず仕事が速いことで。有栖川弟がそれを封筒に納めてくれる。

俺が退室しようとしたタイミングで、仁科が笑みを張り付かせながら立ち上がった。

「じゃあ志賀ちゃんは俺が送ってくね〜?」
「いらねーよ」
「ええ〜帰り道危険じゃない!」
「ねーよ」

お前と二人で歩く方が危険だっつの。
ちぇー、と唇を尖らせながら仁科が着席したのを確認して、もう一度会長を振り返る。

「……ちょっと補佐の早坂貸してください」
「ん? おれ?」

生徒会室の隅のほうで真面目に業務をこなしていた早坂が驚いたように顔を上げた。

Sクラスのヤツだがいつも書類や伝言を届けてくれるから俺たち監査委員とはそれなりに仲がいい。

補佐は三人いるはずだが、たぶん他の二人はお使いに行ってるんじゃないだろうか。
というか各所へのお使いが彼ら補佐の主な仕事だ。
 
俺のお願いに会長が鷹揚に頷いた。

「おお、いいぞ!行って来い早坂」
「すぐ用事済みますんで」
「えー志賀ちゃん、俺も俺も〜」
「テメーはキリキリ仕事してろ仁科」

サボりたいオーラ満々の仁科を切り捨てて俺は早坂とともに生徒会室を出た。



はーやれやれ、疲れた。

部屋を出ると警備の生徒が……増えてた。なんで?
複数の「お疲れ様です」コールに適当に応えて早坂と生徒会室から少し離れた所まで歩いて行った。

休憩室という名の無人スペースに入り、早坂をそこへ促した。
仁科や他のヤツがいる生徒会室ではあんまりこういう話をしたくなかったから。

「んで、おれに何の用?志賀」
「あのさー早坂お前、ケー番教えろよ」
「はあ?」
「今日みたいなことあると面倒だからお前を呼び出すために」
「あーそういうこと」

早坂は苦笑しながら俺の言いたいことを察してくれたようだった。

あの面倒くさい執行部に関わりたくない一般生徒の心情ってのは奴ら本人は理解しないだろうし、かといって面と向かってそういうことをアピールするのも良心が痛むから、こうして早坂を呼び出したんだ。

「お前らはそのための補佐だろーが」
「りょーかい。……っと、あ、やっぱ待って」
「あ?」
「教えてもいいけど、代わりにキス」
「はぁ〜?おま、仕事の一環だろ。プライベートじゃねーんだぞ」
「いいじゃん。その代わり志賀の呼び出し優先すっからさ」
「優先とか別にいらねーけどさー……」

もごもごと渋る俺を、早坂は素早く壁に押し付けてきた。

「いーじゃん、久しぶりにお前とチューしたい」
「うーあー……わかったよ……」

早坂のキスってねちっこいんだよなぁ……。




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