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心臓はどくどくと速いままでも、キスであやされて呼吸を整えた。
俺が落ち着いたのを見計らったらしい天佑は耳元で吐息を零した。

「……すこーしだけ、動くからね」
「ん……、あっ……あっ!!」

少しって言ってたのに奥まで一気に突き上げられた。そのあと波が引くように抜けていく。そうやってその動きが連続した。
狭い場所に咥え込まされ、擦られて、たぶん痛いはずなのに痛くないと錯覚してる。
内壁を擦られるその刺激は指で押されるよりもはるかに良かった。
枕に乗っている俺の腰は天佑に全てを晒す形になっていて、上から突き挿すようにして先端から根元までずっぷりと押し込まれる。
天佑が行き来するたび浮き上がるような快楽で震えが走る。俺はただ、それだけを追った。

「あっ、あっ、あ、やば……天佑、う……っ」
「ん、ん、気持ちぃよ……理仁、可愛い」

天佑も俺と同じように息荒く、言葉は途切れ途切れだ。俺とのセックスで感じてくれてるんだと思うと嬉しくてどうにかなりそうだった。
陽気にふわふわしてる普段の姿とのギャップがたまらなくて、それがまた俺を昂らせた。
そんな風に俺があんまりにもよがってたせいか、やがて天佑は体を起こし小刻みに突き上げてきた。

「はっ、はぁっ……きもちい、あ、もう、出そ……」
「えっ……あっ、ちょ、ま、まだ、天佑……っ」

もっとこの快感を味わっていたくて引き止めようとした。だけど天佑は、俺がギュッと下半身に力を込めた拍子に気持ち良さそうな声を上げた。
中を擦っていた動きが急に緩慢になると物足りなさで寂しくなった。しかし天佑は醒めたそぶりもなく、息荒いまま俺の額に軽いキスをしてくる。

「ん……あのね、さっき言ったでしょぉ?俺まだ、全然、終われないからね」

そう言ってゴムをつけ替える天佑。やっぱり速すぎて見逃した。
その代わり、今度は俺が起き上がって天佑をベッドに沈ませた。肩をシーツに押さえつけてヤツの腰の上に跨る。

「マジで、中途半端にすんなよな、お前……」
「ごめぇん。理仁のお尻が気持ちいーから出ちゃったんだもん」

これっぽっちも謝ってない口調で天佑が笑う。
待ちきれなくて天佑の股間に尻を擦りつけた。あ、良かった、全然萎えてない。
すぐいけそうだと判断した俺は、硬いままの竿に手を添えて腰を落とした。さっきはあんなに大変だったのに思ったより簡単に入っていく。

「んっ、く……あ……」

先っぽがぬるっと入ったらあとは楽に収まった。体重をかけてできる限り奥まで挿入したあとに見下ろした天佑は、恍惚とした笑みを浮かべていた。
天佑の両手が俺の尻をギュッと掴む。滴り落ちる汗を拭っていたら体が揺れた。

「ふ……ぅ、んんっ」

下からゆっくりゆさゆさと揺らされて、俺もその動きに合わせた。
慣れてきたところで膝を立て、大きく抜き差しを加えた。中の、じんじんと熱く感じるところを夢中で擦る。
それだけじゃどうにも足りなくて、ずっと勃ってるわりに半端な状態になってる自分のモノを握った。

「あれっ、触んないでイってほしかったのにぃ」
「で……できねえ、よ……んな器用な、こと……っ」
「えぇ〜」

不満の声を上げた天佑を無視して、腰を動かしながら自分で擦った。
前からもうしろからもくちゅくちゅとエロい音が響く。やべえ、なにこれ、超興奮する。
天佑にも気持ち良くなってもらいたいと思ってるのに、結局は自分の快感ばかりを追い求めた。
もうすぐ、もうすぐいけそうってところで、いきなり体がグラッと揺れた。
その不安定さに慌てて腕を伸ばす。するとしっかりした上半身に抱き留められた。

「うわっ、な、お前、なに、急に……っ」
「理仁……ほんと可愛い、食べちゃいたい」

繋がったまま向き合って座る体勢になると、天佑は甘ったるい声で囁きながらキスをしてきた。
俺もヤツの背中に腕を回して唇を貪った。舌を絡めて、舐め合って、溶けるくらいに体温を分かち合う。

たぶん、俺の一番の性感帯は唇なんだろう。
唇が何より正直だ。だから俺は、初めてキスを交わしたあのときからとっくに心奪われてた。
仁科天佑が特別だと、体で感じ取ったんだ。

唇を合わせたままきつく抱き締め、お互いに体を揺らした。
俺はいつしか足まで天佑の腰に絡めていた。滑り落ちないよう、離れないように強く抱きつく。

「ふ、あっ、あっ、天佑、んんっ……」
「んっ……もっと、名前、呼んで……」
「あっ……ぁ、ゆぅ、てんゆ、う……あぁっ」
「……理仁……好き、大好き……、ごめんね――」

どうしてそこで謝るんだろう。俺も、と返すはずが言葉に詰まってしまった。
天佑の言葉の余韻が俺のあえぎ声でかき消されていく。汗の匂い立つ首筋に唇を埋めても声は止められなかった。
頭がぼうっとして、何もかも分からなくなる。
追い上げられていた快感は今度こそ頂点を掴めそうだった。それを手繰り寄せるために天佑の腹で裏筋を必死に摩った。

「あっ!……あっ、もう、やばい、俺っ、イく……っ!」
「ん、うん、一緒に、いこーね?」
「うん、あっ、天佑っ、ぅあ……っ!」

頷いた直後、ベッドに勢いよく倒れ込んだ。天佑が圧し掛かってくる。そうされても、足まで絡めてしがみついてたから不安定さは少しも感じなかった。
太く硬い熱が奥までえぐるようにして攻めてくる。ひと突きごとに声が上がる。
声が止まらない俺の口に天佑の唇が重ねられた。こんな状況に似つかわしくないほど、そっと触れるだけの口付けだった。

「あっ!んっ!んんんっ……!!」

自分でも驚くくらい突然訪れた絶頂。手で触れることなく、キスの瞬間に精液が溢れ出した。
開放の快感でビクビク震えている最中、天佑もひときわエロい呻き声を上げて大きく数回突き上げてきた。
動きが緩やかになった汗まみれの体をさらに引き寄せて、俺は、天佑の唇を何度も啄ばんだ。


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