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柔らかい唇が俺の体中に音をたてて触れた。足の甲、脛や、膝に、内股にも。そのたびに痺れるような感覚が全身を走り抜けた。
俺にとって天佑のキスは特別だ。蕩けて、脳内麻薬で満たされる感じがする。

「ぅあっ」

そのキスがやがて俺の中心部分にまで届いた。先端から竿や玉にまでチュッチュッと口付けられる。愛おしげに、あますところなく。
弾力のある唇が、敏感な部分を愛撫する。すごく変な感じだ。くすぐったいのに気持ちいい。
不意に、汁が滲む鈴口をちゅうっと吸われた。こじ開けるようにして舌先をそこに押し込まれる。
そのまま肉厚の熱い舌が絡みつくと、直接的な快感で腹の奥がじんじんと重く疼いた。
そのうちにぬるりとしたものが尻の中心に触れてきた。その感触にびっくりして腰が大きく跳ねてしまった。

「あっ……て、天佑……?」
「うん、もっと気持ち良くなろーね」

ローションで粘る指が尻穴周りをなぞっていく。
けれどその指は穴には入らず、なぜか玉の下あたりを円を描きながら優しく押した。

「ん、天佑、な、なに……?」
「ここねぇ、お尻の気持ちいいとこに繋がってるから」

一定のリズムで押したり撫でたりする天佑の指。悪くはないけどムズがゆい感じがする。
そうしてる間にも、天佑の唇は俺の乳首を愛撫した。舐めたり甘噛みをして、わざとらしい音をたてながら吸ったりする。
上の快感と連動して、だんだんと下のほうもマッサージみたいで心地よく感じてきた。

「あっ……あっ、んん……」
「ん……ちょー可愛い声出てる。ね、気持ちいい?理仁」
「う、うん……あっ……!」

頷いたそのとき、細長いものが滑らかに穴の中へと入り込んできた。天佑の指が、内部を侵している。
……一度やれたんだし二回目も平気だろ、なんてちょっと楽観的に考えてた。だけどあの時とは状況も心構えも変わってるんだ、『慣れ』なんてあるわけがない。

なんだこの尾てい骨あたりがそわつく感じ。痛いのとはちょっと違う。
妙な生々しさっていうか、目の前の男にこれから抱かれるっていう現実をありありと実感させられたというか。
いつの間にか指が増え、なんとも言えない居心地の悪さで悶えていたら、また玉の下あたりを軽く押された。

「ひっ!」

声が裏返ってしまった。
どうやら天佑は二本の指で内壁を押し、同時に親指で外からグッと押したみたいだった。つまり、中と外から前立腺を刺激したってわけだ。
冷静に分析してるけど軽くパニックになるくらいの感覚に襲われたんだよ、これでも。

「なっ、あ、てんゅ、ぅあ……っ!」
「ん……もぉ気持ちよくなっちゃった?すごいね」
「よ、よくな、ぁっ……あッ!」

グイグイと刺激されて悪寒にも似た震えが走った。
反射的に足を閉じて天佑の腕を膝で挟む。なのにヤツは指責めをやめてくれなかった。陸に打ち上げられた魚みたいにビクビクと跳ねることしかできない。
なのに、こんなことを好きな男にされてるんだと思うと、やけに興奮して先走りの露がまたじわっと滲み出た。

「あっ、やめっ……だッ、だめ、やばい、って……ぇ」
「ふふ……かーわい」

小さく笑った天佑が、ベッドのヘッドボードに向かって腕を伸ばした。
戻ったその手には個包装のゴムがあった。どうやらヘッドボードのシェルフに常備されてるらしい。それもまあ、コイツらしいというか……。
天佑は俺のうしろに指を咥えさせたまま歯を使って包装を破り、流れるような仕草でゴムを被せた。片手で。

「えっ……な、なに今の?すげえな、お前、早業すぎんだろ」
「またあとで見せたげるよー。どうせ一回じゃおさまんないし」

なんか今さらっと怖いこと言わなかったか?
それを聞き直す前に、閉じていた腿が強引に開かされた。
指が入りっぱなしの尻穴はようやく異物感に慣れてきていた。それを見越したように指が抜けてすぐ、熱い塊が押し当てられた。

「て、天佑……」
「うん……大丈夫だから、俺に任せて」

甘く優しく、耳に響く低い声。
驚くほど体の力が抜けていく。直後に、ググッと全身を押し上げられる感覚がして息を詰めた。

「……うっ……んっ!」
「んー……」
「あ、む、無理……ッ、それ以上、あっ……」
「大丈夫……ちゃんと、入ってるから、理仁……」

何が大丈夫なんだ。大丈夫じゃねえよ。
広げられてるところが熱い。天佑の熱が入ってきてる。
こんな、好きなヤツと繋がってるのに正気でなんかいられない。呼吸の仕方も忘れるくらいに。
どうしよう、苦しい、沈む――。
不規則に浅く息を吐きながら爪でシーツを掻いたらその手を掴み取られた。そのまま天佑の肩に導かれて、必死にしがみついた。

「ん、う、ぅ、てん、ゆぅ……」
「ほら、落ち着いて。痛くない痛くない。ね?」

そういうものかと頷いたら、唇をそっと啄まれた。そうして繋がったままキスを重ねた。何回も、何回も。


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