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二人でお話――って言われても、千歳、龍哉と会う約束もしてたわけだから、結局は三春を連れて二人のところへ行った。
俺の部屋の郵便受けに突っ込んでおいた漫画を取り出して千歳の一人部屋に上がってみれば、龍哉はもう来ていた。

「あれ、三春?」
「そー。俺さっき、三春と例の秘密基地に行って来てさ。あそこ、明日片付けするんだって?」

千歳に向けて言うと、ヤツは面倒くさそうにしぶしぶ頷いた。

「それなんだよなぁ……。部活あるってのに俺も強制参加。超だりぃ」
「強制っつか、お前も改造仲間だろーが」
「作るのは楽しいけど片付けなんてメンドーじゃん」

それから俺は二人に、三春と秘密基地訪問するに至った経緯を大雑把に説明した。
その話の流れで知ったんだが、どうやら千歳はあの物置改造では力仕事全般を担い、棚を作る手伝いをしたらしい。のこぎりを挽いたり釘打ちしたり。
学園中のいらないものをあちこちからかき集めてたわけだけど、もともと物置内にかなりの廃材が置きっぱなしにされてたんだとか。
それらを再利用してあそこまで立て直したんだから、すげえエコ集団じゃねーか。

そのまま四人で他愛ないことを喋り、途中で滝や椎名だとか他のヤツも何人か出入りした。
ちなみに若林は読まずに積んでおいた本の消化で忙しいみたいだった。
ゲームをはじめたり菓子を食べたり、テスト勉強のない開放的な時間を過ごす。三春もおどおどしつつ頑張って馴染んでいた。ほとんど俺のそばから離れなかったけど。

夕飯の時間が近づいてきた頃、食堂に行くより何か買ってきてこのまま千歳の部屋で食おうぜって話になった。
俺もここのところ夜は仁科の部屋で食べてたから、たまにはこういう食事もいいかと思って萱野に連絡をした。
萱野から了承の返事が来たあとに若林も誘ってみた。そしたら若林はおかずの作り置きをしてる最中だった。学食食べ放題権の期限が切れたからだって。
その間に千歳と龍哉が大勢で取り分けて食べられそうなものを『つるたや』に調達しに行った。
やがて若林の手作り和食惣菜が加わり、わいわいやりながら腹を満たしていたら、気付かないうちに時計の針がかなり進んでいた。

「……あ、やべ。俺そろそろ戻んねーと」

寮が閉まる時間にはまだ余裕があるが、ギリギリに戻ってまた会長と鉢合わせするのは避けたい。あの人が嫌いとかそういうことじゃなくて話すと疲れるから。
みんなは「もうこんな時間か」と言いつつ解散の雰囲気じゃなかった。

「理仁、今日はこっちで寝れば?」
「あー……」

龍哉にそう言われたけど、ちょっとだけ考えて首を振った。

「や、向こう帰るわ」
「そう?」

仁科には戻るって言ったし、俺もあいつの顔を見たいから。同室生活の終わりが近いなら尚更。
龍哉も思いつきで出た提案だったみたいであっさりと流した。
適当に別れの言葉を言って千歳の部屋を出る。ところが廊下を歩いてる途中で、あとを追うようにして三春が小走りに追いかけてきた。

「リヒト君っ」
「おー、どうした?」
「えとえと、あの、今日……ありがと、って、言ってなかったから!」
「ああ、いいって別に」

わざわざ追いかけてきてまで律儀なのか何なのか。そして三春は俺と一緒に廊下を歩きだした。

「お前もこのまま部屋戻んの?」
「う、うん。あっ、ううん、スマホ取りに行く、だけ」
「あれ、持ち歩いてねーんだ」
「あ……あんまり連絡とかって、ないから……そういう習慣がな、なくて」

恥じ入るように俯き語尾が小さくなる。
手元に連絡手段がないと落ち着かない俺とは逆だな。スマホの存在を忘れられるのは羨ましい気がする。
だいぶ会話が分かりやすくなってきた三春と喋りながら歩き、途中で別れて俺は玄関に向かった。
もうすぐ門限とはいえ寮周りは生徒の出入りが頻繁だった。寮裏のほうからは騒がしい気配や笑い声が聞こえてくる。
陽が落ちて少し涼しくなった夜道をゆっくり歩いて特別寮に戻る。こっちは一転してひと気もなく静まり返っていた。

「ただいまー……って、仁科?」

部屋に上がりリビングをのぞいても仁科の姿はなかった。萱野と親衛隊副隊長もいない。まったくの無人だ。
とりあえずシャワーでも浴びようかと思って浴室に行くと暖色の照明がついていた。夕方に見た仁科の服やアクセが棚に置かれてる。
なんだ、風呂に入ってるのか。シャワーの水音はしないから湯船に浸かってるらしい。
仁科が出てくるのを待つために、俺はリビングに戻ってソファーに座った。
風呂から出てきたら、どういう場所に行って遊ぶのが好きなのかとか色々聞きたい。その流れでデートのお誘いができれば上々。

時間つぶしのためにテレビをつける。
仁科はCSで海外のドキュメンタリー番組をよく見てるからチャンネルがそれになっていて、そのまま俺も同じものを見はじめた。
UFOやUMAを証拠物をもとに研究チームが科学調査するっていう番組がなかなか面白くて思わず見入った。


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