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望月先輩はカッコイイ寄りのフツメンって感じだが、やたらと背が高い。自分の目線と比べてみて190届きそうだなってくらい。仁科よりも高そうだ。
そんな先輩と視線が合うと、彼は白い歯を見せて気さくに笑った。

「えっと、望月先輩なに飲みます?お茶かコーヒーくらいしかないですけど」
「紅茶はある?」
「ティーバッグのでよければ」
「あっ、先輩先輩、お茶ならおれが淹れますよ!」
「お前は絶対触るな」

何度も失敗してるのに何故やろうとする、ミネ。そのはた迷惑な自信はどこから湧いてくるんだ。
すると田中先輩が心得たとばかりにミネ君の前に封筒を差し出した。

「ほら峰岸君、風紀委員から預かってきた出来立てホヤホヤの監査書類だよ。また執行部といざこざ起こしてるみたいだね。見てごらん」
「うえぇ〜懲りないっすね、あの人たち!」

それはもしかしなくても『翼君と愉快な仲間たちの秘密基地問題』だろうか。
俺も大いに興味を引かれたが、まずはお客さんである望月先輩のもてなしが先だ。
視線を感じて顔を戻すと、望月先輩と目が合った。

「監査委員って楽しそうだな」
「え?いやいやそうでもないですよ。雑用ばっかですし」
「一度見てみたかったんだ。監査室」
「はあ……。ところで先輩は部活とか大丈夫なんですか?」
「同好会の幽霊部員だし」

それは要するに帰宅部というのではないだろうか。三年だから受験を見据えてあえて幽霊部員なのかもしれないが。

紅茶を淹れて望月先輩の前に置いたそのタイミングで、唐突にノックが響いた。
生徒会補佐かそのあたりかと思ったが、ドアが開いたのを見てつい口が半開きになってしまった。――そこにいたのは仁科だったから。

「やっほー志賀ちゃん」
「お、お前どうして……」
「お迎えに来たんだよぉ。志賀ちゃんに預け物してるじゃん?」

預け物と聞いて反射的にポケットを撫でた。仁科が言いたいのは、特別寮の鍵のことだろう。

「せ……生徒会は?」
「ん〜?俺は関係なさそうだったから抜け出してきちゃった。風紀のお説教なんか聞きたくないしぃ」

あ、やっぱり秘密基地の件はまだ続いてんのか。
たしかに仁科はあの悪ふざけに参加してなかったみたいだし、説教のとばっちりなんてごめんだろうな。

「つか、俺まだ委員会あるし、今返す」
「だぁめ。それは志賀ちゃんが持ってて。監査終わるまでここで待ってていい〜?」
「いいもなにも……」

急な仁科の登場で田中先輩は目を丸くしてるし、ミネ君は怯えた表情してるし、望月先輩は……困ったような顔をしてる。
仁科はちゃっかり望月先輩の隣に座って「志賀ちゃん俺にもお茶ちょーだい」なんて甘えた声でふざけたことを抜かし始めた。
それで素直にこいつの分まで用意しちゃうんだから、俺ってマジでどうしようもない。

そのあと、仁科は俺にしつこく絡んできてウザかった。せめて計算中は黙ってろ!


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