かくして少女は落ちていく
俺も一緒に暮らすから、とイケメンさんはまたもやとんでもない一言を放った。色々と突拍子もない事だらけで、多少の事ではもう然程驚かなくなったんだけど。
「…え?意味分かんない。
あなたと?一緒に暮らすの?」
それって色々ヤバいんじゃ……。
「そうだ。…あぁ、心配ならいらねぇよ?
俺はお前の為にいるんだから、まぁ執事みてぇなモンだと思ってくれればいい」
「執事?」
「そ、執事」
執事かぁ。いや、家事を怠ける私としては嬉しいことだし、執事に憧れはあったけど…実際に執事を雇う(?)となるとどうなんだろう。不安だらけだ。
「とにかく、俺もここに住むからよろしく。
ついでに名前付けてくれると嬉しいんだけど」
私が執事について悶々としてると勝手に話が進んで………え、名前?
そういや、イケメンさんって名前無いんだっけ。でもなんか名前付けるってペットみたい。
「執事じゃなくてペットでもいいぜ?」
マジか。……いや冗談だろうけど一瞬本気で考えてしまった。
「うーん…名前かぁ…。
そんな大事なこと私が決めていいの?」
「あぁ、お前は俺の主だからな」
主…主ねぇ。…………いいかも←
よし、ペット兼執事ということで決定!
「分かった。名前は……そうだね。
―――ルキ、なんてどう?」
「ルキ、か?」
「そう、ルキ」
響きが格好よくない?
私はメモ用紙とペンを取り出し、さらさらと文字を書く。メモ用紙には『琉樹』の文字。
「字はこんな感じね」
「……いいな、気に入った」
イケメンさん……琉樹は、名前を気に入ってくれたようで、自分の名前を反芻している。顔が嬉しそうだったので私もほっとしてはにかんだ。
「そっか良かった。
気に入らなかったらどうしようかと思った」
「いい名前だよ。ありがとな」
「いいえ。
これからよろしくね、琉樹」
「こちらこそよろしく、玲」
なんだかくすぐったい気持ちで、私たちは握手を交わした。なんか私さっきも思ったけど、警戒心薄くない?まぁでも、いいや。琉樹は悪い人ではなさそうだし。
ここまできたらもう色々と諦めるしかない。神様云々も、今のところ問題はないようだし、琉樹が何者かなんてどうでもいいんじゃないかな。
これから琉樹との生活が始まる。とりあえず、琉樹が執事になってくれるみたいなので生活に困る事はないだろう。多分。
さて、これからどうするかなー。
とりあえずお腹空いたから、さっそく執事のお仕事を頼もうか。
****
というわけで、私はリビングで遅めの朝食タイムだ。琉煌は流石というかなんというか、料理が上手い。昼食の事を考えて軽めの朝食だが、これがめっちゃうまい。こんなご飯毎日食べられるとか幸せ。
「ところで、此処ってどんな世界なの?」
私は、スクランブルエッグを突っつきながら聞いた。異世界らしいこの世界のこと知っておきたいからね。
「あぁ、貴女の居た世界と然程変わりませんよ。ただ少し特異な方々が居るようですが…」
「え、待って。キャラどうしたの?」
急に丁寧になったよ琉樹さん。
「僕は、あくまで玲様の執事ですから」
某悪魔なブラックバトラーの台詞だよそれ。一人称まで俺から僕に変わってるし。てか玲様って…。
「……いけませんか?」
「いやっ全然!」
むしろ執事服を着せたら似合いそう。
「そうですか。ではこのままで」
「そうだね。あまり畏まらなくてもいいけど」
「分かりました」
「うん。……で、話を戻そうか。
特異な方々っていうのは?」
「そうですね……貴女の世界には居ないような人間です。マフィアに多いようですが、人間が炎を使って戦闘するんですよ」
わお、なんか聞き覚えあるぞそれ。マフィアと炎、なんてアレしかないんじゃないか?某家庭教師がマフィアの十代目を育てるっていう。
というか自分で聞いといてアレだけど、琉樹はどこでそんなことを調べたんだろうか。
……あぁ、神様情報か。
「えっと……一応聞くけど、ボンゴレファミリーとかいう巨大イタリアンマフィアがあったりする?」
「ええ、ありますよ」
「キャバッローネも?」
「はい。よくご存知ですね」
「まさかとは思うけど…ここってあのREBORN!の世界?」
「はい、正解です。やはりご存知でしたか。
因みに僕たちの現在地は並盛ですよ」
な ん て こ っ た !
かくして少女は落ちていた
(…ってもう落ちた後かよ!!)
(マフィアの世界とか私死ぬかも)
(僕がお守りしますから大丈夫ですよ)
20120907
題名:リップノイズ様
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