だれおま
とりあえず私は、謎のイケメンさんの話を聞く事にした。理由があって家に居たんだろうから。不審者の話を聞いてあげる私って優しい!…え?聞いてない?
で、謎のイケメンさんの話を整理するとこうだ。
まず、イケメンさんは神様に生み出された言わば神の子で、名前はないらしい。
そして、何故か私が居たあの真っ白な空間の説明もしてくれた。あれは時空の歪みで、私はうっかり巻き込まれちゃったらしい、と。そんな私を哀れに思った神様が、イケメンさんを私のところへ原因究明&保護するために派遣。因みに原因は不明だそうだ。
……いやいや、待て待て待て。いきなり神が時空が云々とか言われても、こっちは「は?」なんですけど。このイケメンさんの頭は残念なのかな。
私は放心状態。イケメンさんは困ったように微笑んでいるだけ。本当、イケメンは何してもイケメンだなぁ。
「…っじゃなくて!
えーと、まず神って何。存在するの?
神様とか信じないよ私」
「……ま、いきなりじゃ無理もないし、その辺はいいとしてだ」
「いいんだ」
「実はお前に関して言わなきゃならない事が他にもいくつかある」
イケメンさんが真面目な顔で言うので、私も聞く態勢をとる。
「まず一つ、ここはお前の居た世界じゃない」
「……………は?」
「まぁ俗に言うトリップってやつだ。
あの時空の歪みのせいで違う世界に飛ばされたっぽいな」
「……」
「完璧に保護しきれなかった俺のせいでもある。まぁ保護出来ててもお前は今ごろ霊安室……って聞いてる?」
「……………」
展開が早くて付いていけません先生。
うん。まぁ…ね、神とか時空の歪みとかの時点で薄々は気付いてたよ?私も夢小説とか読んだことあるし。けどまさか、自分がトリップ体験することになるとは思わないよね普通。ていうかコイツ今さらっと私が死んだこと言いやがった。
「あ…うん。聞いてる聞いてる」
「そうか?大丈夫なんだな?」
「うん。…で?二つ目は?」
まず一つってことは二つ目があるんだよね。とりあえず今の神様云々は置いといて(頭が追いつかないし)。頼れるのは目の前のイケメンさんしかいないみたいだから話を聞こうじゃないか。危険な人ではなさそうだし。
私が切り出すとイケメンさんも真面目な顔に戻って話し出す。
「あぁ、二つ目だが、お前の体の事だ」
「え?体?」
「そうだ。実はな、お前の本来の体はあの時空の歪みで見失ったんだ」
「え゙」
「で、意識だけ浮遊してた所を保護して、今の姿を神様がお前に授けたって訳だ。
……違和感を感じなかったか?」
「いや全く」
さっきまで寝ぼけてたし混乱してたし。
「…おま…(鈍感すぎるだろ…)。
とりあえず自分の髪見てみろよ」
「え?…うわっ!なにこれ!」
私の髪は前と変わらず長いままだったが、色が明るい茶色になっていた。しかも軽くウェーブがかかっていて、おまけにさらさらだ。
「な?違うだろ?」
「うわーさらさらだぁ。やわらか。
ホントにこれ私の髪?」
さらさら、さらさらと指で梳くのが楽しくて、イケメンさんを無視して夢中になっていた。だって女の子なら誰しも憧れるさらさらキューティクルヘアーなんだぞ!指通りが気持ちいい。
「ま、そんな感じだ。後は自分で鏡見ろよ」
「オッケー今見てくる!」
「って早!」
私はダッシュで洗面所へ。
そこで私はやっと自分の体に違和感を感じた。目線が若干低い。そして体が軽い。足が早い。
あっという間に洗面所に着き、鏡の前に躊躇いなく立つ。そして鏡に映る自分を見て一言。
「だれおま」
(こんにちは新しい自分)
20120703
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