ぐっもーにん
チリリ――…チリリリッ――
目覚ましが鳴ってる。起きなきゃ。
でも眠い。まだ寝たい。…目覚ましうるさい。
ガンッ
あ、やべ、目覚まし時計に裏拳かましてしまった。壊れてなきゃいいけど。それより私の手の甲が地味に痛かったけど。
ゆっくりと目を開ける。いつもより頭が重い。
「…んー…(頭痛い…)」
目が覚めてしばらく真っ白な天井を見つめながらも、うつらうつらしていたのだけれど…ゆっくりと頭が覚醒していくにつれ、"白"に違和感を覚える。
「ん?」
私は上体を起こして辺りを見回す。
私の、部屋だ。私はベッドの上でちゃんと毛布を被っている。いつもならこれで違和感を覚えることはない。"いつも通り"だ。だけど何かがおかしい。
って、あれ?さっきまで私、何してた?
確か変な空間にいて、それで、いつの間にか気を失ってたはずだ。――そうだ、それこそ"真っ白"な空間で…――あれは、夢だった?
え?まさかの夢オチなの?頬まで抓ったのに?いや、まぁ夢であって欲しいっていうか夢じゃなきゃ有り得ない。絶対有り得ない。あってはならない事だ。
――自分が死んだ、なんて。
それにしても酷い夢を見たなぁ。
妙にリアリティーがあってホントに夢、だったのか…よく分からないけど。
「あ、起きた?」
私が寝起きの頭でぼけっとしてると、頭上から声が降ってきた。
「!!?!?」
私は驚きのあまり声も出ない。びっくりしすぎて目がすっかり覚めてしまった。
「そんなに驚く?」
この部屋…というかこの家には私以外誰もいるはずがないのだ。しかも、さっき起きた時に辺りを見回したけど誰もいなかった。
目を見開き声の主、つまりベッドの右手にある窓際付近をガン見する。声の主はソファに足を組んで座り、優雅にコーヒーを啜りながらクスクスと笑っていた。顔は逆光でよく見えないがイケメンっぽい。
「え…………。
……ぅえっ!?あれ?どういうこと?…いや…待って、ここ、どこ?
え?私の部屋じゃ…ないの?」
混乱。私の頭はたくさんの色んな疑問が、飛び交ってこんがらがってぐちゃぐちゃだ。相手の話なんか聞いちゃいない。今、自分がどういう状況なのかさっぱり分からない。知らない人が居ることで、ここが自分の部屋なのかも疑ってしまう。
あー、もう!さっきの違和感だけでもモヤモヤしてたのに何この状況!訳が分からなすぎる!頭ん中ゴチャゴチャしてて気持ち悪い!
とか考えてると、その男が立ち上がってこちらに歩いてきた。あ、顔見えた。うっわぁ、めちゃくちゃイケメン。
私は近づく男を無意識に警戒するが、男はある程度の距離を置いて立ち止まった。
「思ったより混乱してるな。まぁ無理もないが……気分はどうだ?」
「は?気分?………最悪かな!」
私はそんなことどうでもいいとばかりに嫌味を込めてそう言ったが、男は苦笑いをして肩を竦めるだけだった。ちょっとイラッときた。今の私はモヤモヤムカムカしてるから機嫌が悪い。
………よし、さっきのは全部頭からすっ飛ばして今だけ忘れよう。ごちゃごちゃ悩むよりその方が私の為だ。
「てか、どうでもいいけどアナタ誰ですか」
まず最初の質問。
今更だけど誰なんだろこのイケメン。
このイケメンさんがなんて返答するかなんて想像もつかないが、場合によっちゃ警察を呼ばないといけないかも知れない。
しかし男は到底信じられるはずのない、とんでもないことを言ってのけた。
「俺?あー…なんて言えばいいかなぁ。
………名前とか、無いんだよね。
そうだなぁ…強いて言えば
神様から生まれた、神の子?」
「……はい?」
よし、警察を呼ぼう。
(ぐっもーにん、謎のイケメンさん)
(頼むからこれ以上私の頭を混乱させないでくれ)
20120609
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