短編 | ナノ





「私怖いのダメなんですってば!」

「知るか」

「だから、ホントに…ダメですって…ば…っきゃぁぁ!!」

「……」

フランに借りたDVDを見ていた私は、只今ボスの部屋で大絶叫中。何コレ怖い。怖いの無理。
…怖いのがダメなら借りなければいいじゃんって話だけど、ホラーだって知らなかったんだよ!ちくしょうあのカエル私がホラー苦手なの知ってたな!

「もももう無理です無理やだ怖い無理もう無理ホント無理」

絶叫して無理を連呼しながら思わずボスに抱き着いてしまったが仕方ない。マジで怖い。余りの怖さにぎゅうぎゅうと必死にボスに抱き着いて、首を横に降り続ける。

「…ちっ」

「!(舌打ちされた!)」

絶叫しまくる私を見兼ねてか、ボスがテレビを消してくれた。…まぁ、ホントは単につまらなかったとかそう言う理由だろうけど。

まだ震えながら自分に抱き着いたままの玲を見下ろすXANXUS。

「…ドカスが」

「ごめんなさい…」

怒られた。どうしよう。やっぱりウザかったのかな。
私はしゅんとして抱き着いていたボスからそっと離れる。嫌われたかと思って悶々とするけど、思い切って話し掛けてみることにした。

「あの、ボス…」

「玲」

「は、はいっ」

話し掛けようとしたけど遮られ、名前を呼ばれたので反射的に返事をしてしまう。……声裏返ったかも知れない恥ずかしい。

「…今日は俺の所で寝ろ」

「え?……いいんですか?」

「どうせ怖くて寝れねーだろ」

「…ありがとう、ございます」

図星を突かれたが怖くて眠れないのは事実だし、ボスの言葉が嬉しかったので素直にお礼を言った。そしてちょっと恥ずかしくなって俯く。
そしたらギュッと温かい何かに包み込まれて、今度は私がボスに抱きしめられていると気付いた。俯いていたからちょっとビックリしたけど、ボスの腕に包まれて嬉しくなる。背中に腕を回してギュッと抱きしめ返したらボスに更に強く抱きしめられた。
……ちょっと苦しいかな。

「ちょ…く、苦しいですボス…」

「………」

無視っ!?えぇぇ…苦しいんですけどボスぅ。
まぁ、ボスが抱きしめてくれるなんて滅多に無いから嬉しいんだけど。だってボスいつも肩を抱くことはあるけど、キスのときも抱きしめるとかじゃなくて頬を包むようにしてくれるし…って、そうじゃなくて、苦しいんだった。

「ボス、…ボス?」

「……」

ちょっと緩めて欲しいなーと思いつつボスを呼んでみるも反応ナシ。しかも抱きしめられているものだから声がくぐもってる。

「………XANXUSさーん」

「…なんだ」

もしやと思って少し躊躇いがちに名前を呼べば、やっとボスが腕を緩めてくれた。なんだ、やっぱり名前呼んで欲しかったみたい。
ほっと息をつくけど、それでもボスはまだ私を抱きしめたままだ。次いで額や瞼、鼻、頬と、至る所にキスを降らしてきた。

「ん…」

そして唇に柔らかい感触。
何度も角度を変えて、啄むようにキスを繰り返す。深くはない、甘くて柔らかい感覚に酔いしれる。最後に長めのキスをして名残惜しげに離れた唇。

「ざん、ざすさん…」

「……」

「…なんか………いや、今日何かあったんですか?」

今日のボスは珍しく抱きしめてくれるし、いつもみたいに噛み付くようなキスじゃなくて優しいキスだったから、不思議に思って聞いてみた。けどやっぱりボスは「…知るか」で一蹴する。ちょっと寂しい。
私は、「そうですか」とだけ言ってボスのシャツの裾をきゅっと控えめに握った。

「………」

「!」

……ボスは、ずるい。
私が寂しいのに気付くとすぐ頭を撫でてくれる。その手は不器用だけど、それでもそれだけでさっきの寂しさなんて吹き飛ぶんだから、やっぱりボスはずるい。
私はえへへっと笑って、照れ隠しにボスのその厚い胸板に顔を押し付ける。

ボスの腕に包まれながらしばらく、私達はお互いの鼓動を聞いていた。私はこの静かで穏やかな時間が一番好きだ。
そうしてしばらくもすれば、心地好い体温と撫でられる気持ち良さからすぐに睡魔が襲ってきた。目を擦って欠伸を噛み殺すがそろそろ瞼が限界だ。眠い。

「…XANXUSさん」

「なんだ」

それでも、一つだけどうしても伝えたい事があって、薄れゆく意識の中で呟くように言った。

「…すき、です…」

「…」

ちゃんと届いたかな。届いてるといいな。
そして私はゆっくりと瞼を閉じた。


****


一言残して、寝てしまった玲を起こさないように抱き上げてベッドまで運ぶ。玲をベッドに降ろして寝顔を眺めながら、さっき言われた事を思った。
…好き、か…。俺は…

「んぅ…」

玲がもぞもぞと寝返りをうったので、一瞬起こしたかと思ったが寝ていた。
XANXUSはふっと口元を緩めて玲の額にキスを落とす。





(俺は、愛してるけどな)

即効性君色中毒
(ほらまた、君に嵌まっていく)







−−−−
実は見守る側のフランが仕掛けた罠(?)。フランは玲ちゃんがホラー系ダメなことを知ってて、ボスと見るように言った的な。あとXANXUSのスキンシップが若干激しかったのはただの嫉妬。

20120126
(お題:まったり屋ポレポーレ。様より)

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