「オイオイおどろいたで」
「そうか?」
「手品みたいやあの遅い球が浮いてきょった」
「浮くわけねェだろあんな遅い球」
「ンなジラさんとタネ教えてやあ」
「フッフッフ!簡単に言えば!」
「言えばーーー?」
「三橋のタマは"遅いストレートより速いんだよ"」
****
畠か・・・三橋結構ビビってんな。まっ畠のやつ力んでるし・・・この回は問題無いがアイツ(叶)がヤツらにやる気を出させたらどうなるかわからないけど。この勝ち方で三橋の為にならない気がする・・・つーか三橋勝ても自信つかないと思うけどな。あっピッチャーフライだ。
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「織田さっき何狙ってた?」
「まっすぐ」
「配球は?」
「まっすぐ、まっすぐ、カーブ、カーブシュート・・・ あ?」
「織田の狙い球あのキャッチに読まれたんだよ他のヤツラも多分そうやって打ちとられてる」
「ははだいたいオレ打たへんからまっすぐ放らせてキャッチに言うたしな」
「・・・織田勝つ気ねェのか」
「え・・・イヤいつでも打てそうやし・・・」
「お前まで三橋をなめんのかよ」
「・・・・・・っ」
「4番のお前がそんなんじゃオレはまた三橋にまけちゃうじゃねェか・・・!」
「"また"て・・・中学ン時のコトは・・・ヒ・・・ヒイキやったんやろ?」
「ヒイキ?そんなの畠が言ってるだけだよ!」
「ええ?(球筋の話さし引いても叶のが上やで畠が言うてるだけちゃうやろっ)」
「オレは三橋に勝てる気がしない・・・でもこんなこと言うヤツはマウンド乗る資格ねェのもわかってる!」
(このくい違いはなんやねん叶はいったい三橋のナニに負けとるちゅーねん!)
叶は織田の胸ぐらをおもむろに掴みだす。
「頼むよ織田!」
「は!?」
「三橋と投げ合う機会なんてもうない!この試合でオレを三橋に勝たしてくれ・・・!!」
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畠ピッチャーフライツーアウト
6番門田空振り三振スリーアウトでチェンジ。
(はっガッツポーズ!ち・・・調子、のっちゃう・・・)
三橋がオロオロし始めたところ三橋の背中を田島が思い切り叩く。皆が三橋へ駆け寄り一人一人声をかける。
「ナイピッチ!」
「どぅわっ」
「ナイピッ!」
「は」
「ナイピーッ」
「ふっ」
「いい調子だぜ」
「あっ阿部君」
「三橋!ナイピッ!!」
「惟世君」
「気温上がってきたからな水分とっとけよ」
「あ・・・阿部君」
「あ?」
「オレ・・・ピッチャー、楽しい・・・マ、ウンドが、楽しい・・・っまた、登りたいっ」
阿部君は目を見開く思わず笑ってしまう。
「これが野球だよ。これが野球の魅力だよ。マウンドは楽しむ場所だよ、三橋!」
「うん!」
「オレもピッチャー楽しいよ!」
「おおっ」
「はは!まだ試合は序盤だよ!ホントに面白いのはこれからだからね!」
「は、いっ」
(まだっこ、れからだ、まだ、あそ、こ、でっいっぱい、投げられるんだ!)
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