おお振り ストロベリーヒーロー | ナノ



「……腕折るってナニ」
「……」
三橋は黙ったまま泣いている。
「オイ!マジでンなけとされたんならだまってちゃダメだぞ!」
阿部は怒鳴っているがこれは阿部の優しさだと思い俺は口出さないことにする。
「……は、畠君っは…かっ叶君に…投げっさせようとっして…でもっオレがっマウンド…降りないっからっ」
「だから腕折るってのか!?」
「やっやんな、かったし……っ…それにっ畠君はっ悪く、ないんだっ。だって、叶君のがっいい投手だしっみんなに、好かれ、てるし…オレはっ…きっ嫌われ、てるしーっ!」
「おい、阿部イライラすンなよ…。」
阿部がかなりイライラしてるからこっそりフォロー入れる。
「だってコイツがっ!」
「今怒ったら、三橋マトモに投げられなくなるぞ!少し落ち着けって。」
(惟世の言う通りだ…)阿部は何か躊躇いおもむろに三橋の手を握る。

「う!?」
「大丈夫!お前はいい投手だよ!」
「……う……うう……っウソだあーっ」
三橋はさっきより泣き出す。
「いい投手だよ!」
「うそっですーっ!」
「いい投手だって!」
「うそだあーっ」
阿部が痺れをきらせているようなのでまたこっそりフォローを入れる。

「阿部…もっと手を触ってみろ。三橋がどれだけ頑張って来たかわかるよ?」
「んなっキモいこと出来ねェよ!」
「いいからやってみろ。投手のオレを信用しろ。」
真剣な剣幕で阿部がビクッとしてオレの言う通り三橋の手を触った。

(ンなのわかる訳ねェだろ!こいつなんてガンコな…それにしても冷たい手だな緊張してるんだな――あ、指先が硬い……マメがタコになってるんだ。シュートのタコ、スライダーのタコ……こいつはこのタコをつくるまであのコントロールを身につけるまで一体何球投げてきたんだろう。こいつはこんなに努力してんのに…惟世の言う通りだ…。)
「やっぱり……オレ、なんかっな……投げちゃ……っ」
(ガンコなんじゃない自信がいんだ…けんだけ投げても自信持てないんだ。中学のヤツラがこいつから自信を根こそぎとってったんだ。こんなに努力してる男を理解しないままチームから追い出したんだ!)
「……お前はいい投手だよ。」
(ムカツクけどイライラするけど)
「投手としてじゃなくてもオレはお前がスキだよ!だってお前がんばってんだもん!!」
阿部は三橋の手を握りながら泣いている。
阿部も気付いたんだよかったとホッと胸を撫で下ろす。

(こいつのために何かしてやりたい。こいつの力になりたい!それが捕手か!!!―手があったかくなってる)
「―……オ、オレ…がんばってるって……思う?」
「思う」
「オレも三橋ががんばってるって思う。」
阿部が握ってる上から両手で包むようにオレも2人の手を握る。

「オ……オレオレ……ピッピッチャースキっなんだ!」
「わかるよ」
阿部はさらに力を込める。
「そう!?惟世君っ阿部君っわかる!?」
「「うん、わかる。」」
「オレ……そいでっオレ…勝ち、たい!」
「「勝てるよ!」」
(惟世、君も…阿部っ君…も…あきれない…2人…は…オレのことっホントに…認めて、くれるんだっ)

「オ……ッオレもっ惟世君と阿部君がっスキだ!!」
「ありがとう。」
(言うのはいーけど言われんのはビミョーだな…。)
阿部を見たら複雑な顔をしてたから肘でつっついてやった。
「……どーも」
「さ、行こうぜ。」
「おう。三橋試合前に各打者の特徴教えてくれ!」
「ハイッ」
三橋は返事をするとスタッと立ち上がった。

「三橋って実はスゲー単純なやつ…?」
グランドに向かいながら阿部がオレに耳打ちしてきた。
「まー結果オーライだろ…。」
苦笑しながらフォローする。


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