1周年記念:中編:白石忍足財前 | ナノ
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心揺さ振る音の欠片

写真部の展示用の写真を選ぶために部室にこもること約1時間。これいいな、と思うのはほとんどあの3人の写真ばかり。これじゃあ女の子受けを狙っていると勘違いされそうだ…そう苦笑いをしてみるけど自分でもよく撮れていると思う。
一枚の写真を手にとってみる。財前と忍足と白石が箒やバチでバンドの真似事をしている時の写真だった。ちょっと前のことなのに懐かしさを感じた。それほど今の彼らは進んでいるということか。
箒はベースに変わって、バチはスティックになった。

手に持った写真の隣に、ギターとドラムを弾く財前と忍足それに机の上に座りながら歌っている白石の写真を並べてみる。過去と未来の変化が手に取るようにわかって、胸の中が急に熱くなった。
確かに変わったものがあると、目で見て違いを感じているからだろうか。

「展示用の写真選ばなくちゃいけないんだった…!」

やらなくちゃいけないことを思い出して慌てて机の上に散らばっている写真をかき集めて、どんなイメージの写真を展示させようか悩みつつ一枚一枚写真を見比べていく。
自然と、3人で作り上げたメロディのサビの部分を鼻歌で歌っていた。影響されているというかなんというか…。

さっき並べた白石たち3人の写真2枚を手帳に挟んでしまって、他に5枚ほど景色を写したものを小さな封筒に入れた。これを明日部長に提出すれば私は暇になるんだなと思うと背中が軽くなった。


「おー!おったおった」
「うえっ、!?」

ガラッと突然ドアが開く。二カッと笑顔を見せる忍足が立っていた。その後ろで欠伸してる財前と片手で手を振っている白石がいた。

「なに?」
「何って、お迎えに決まってるやん」
「迎えに来たんですか」
「おう、一緒に帰ろうや」
「うん」

4人並んで歩くとどこか落ち着く。互いに互いを必要としているのが素直に嬉しかった。

「先輩、写真は決まったんですか?」
「ん、うん。決めたー風景画」
「あれ俺らの写真とちゃうん」
「それだったら写真部の売り上げが一番だね」
「写真部金取るんか」
「冗談だよ、見るのはタダです」

文化祭もうすぐやな、白石が静かに呟いた。携帯でカレンダーを表示してみる。文化祭まで1週間をきっていた。

「なんか、ほんとにバンドみたいになってきたよね」
「せやなあ、箒や木琴のバチでがちゃがちゃやってた時と比べたらだいぶ進化したよなあ」
「箒でがしゃがしゃやっとった俺を思い出すとちょっと恥ずかしいっす」
「なんでや、結構いかしとったで」
「なんでやねん」

ささやかなツッコミが決まる。忍足がメロディを口ずさむ。頭の中の奥の奥にまでその声は届く。心の奥から角から浸透していく。この歌のタイトルは何になったんだろう。白石たちはもう決めたのかな。

目を閉じてみる。躓いてこけそうになって白石に心配された。財前には呆れられ忍足には騒がれた。