×
己の好奇心に素直に従ってみました 久々に揃った4人。久しぶりやな、忍足が言う。でも来週からまた忙しいやんと白石が苦笑い。財前はずっと無言。世間話で盛り上がる。そしていつものように音が舞う。財前はギターに触らずずっと考え込んでいる。私はそんな財前を観察している、何も分からなかった。レンズを覗いたら心も覗けるかもしれないとカメラを構えてみたけど、何も分からなかった。 「どうしたの財前、今日ずっと黙ってるね」 「……まあ」 また黙り込む財前の周りに忍足と白石がやってくる。 「そういや来週から文化祭の準備やな」 「俺らのクラスは普通に喫茶店やけどな」 「テニス部では何かやらないの?」 「あー、やらんなぁ。小春とユウジの漫才だけやわ」 「写真部では何かするん?」 「ん? うん、展覧やる。今まで撮った写真飾るだけだから楽だよ」 「新聞部はあれか、文化祭終わった後のレポートやっけ」 「だから新聞部員は文化祭回りまくらなくちゃいけないのよね」 「何やねんそれ!」 「楽しんだ者勝ち、ってやつ?」 「……あの、」 財前が頬杖をつきつつ私たちに喋りかける。あれ、さっきまであんなに考えこんでたのに何だこの態度のチェンジの仕方は。 「俺の知り合いが軽音部に入ってるんですけど」 「おお、あの金髪やろ?同じ金髪やから知ってるわ」 「何その理由」 「ほんで、軽音部ステージでライブやることになっとるんやけど、その前にちょっと時間あるんでくれる言うんですわ」 「へ?」 「ステージ利用させてやるって言われて」 歌ってみません、と財前は二人を見ながら訊く。突然のことに白石と忍足は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていた。開いた口が閉じれていない。私は、ああそういうことかと妙に冷静に話しを聞いていた。 「俺、やってみたいんやけど…」 財前が語りかけるのはきっと二人の内側にあるもの。二人はそこを刺激されたらもう嫌とはきっと言わない、言えない。白石はええで、と視線を外しながら言った。忍足はやったるわと笑顔で答えた。何だこのノリ。羽ばたくきっかけを与えたのは財前の持ちかけで、先を越されたような気がして財前を睨む。そんな私をものともせずに財前は生意気にも「先輩は一番いいトコで見とってくださいよ」とチロルチョコを渡しながら言ってきた。 こいつ、いい子だ。 |