1周年記念:中編:白石忍足財前 | ナノ
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好きなことに夢中になって何が悪い

私と白石は同じ新聞部で、白石はテニス部と兼部してて私は写真部と兼部していた。白石は写真部と新聞部に所属している私をいつも同じような部活なんでわざわざ両方入ってんねんと笑っていた。
写真が、事実を伝えるのが、好きなのだ。新聞部だけでもそれは叶うのだけど、写真を撮るということだって私はメインにしたくて、こだわりたくて、だから写真部にも入った。確かに似ているけれど、写真と新聞というのは似ていて実は異なることなのだと、笑う白石に小1時間ほど熱弁したら今度は忍足に呆れられた。そんな忍足に、この問題はとても大きなことで決してくだらないことで白石に語っているわけじゃないと力説していたら、後輩の財前が先輩ら今日も熱いッスわ…と冷ややかな目で見られた。

白石と私は同じ新聞部で、忍足と財前は白石と同じテニス部で…共通する部分もあって気がつけば何故か仲良し4人組になっていた。写真部で撮った写真を新聞に載せるために現像していたら、同じ新聞に載せる小さな小説コーナーの原稿を持った白石がテニス部の2人を連れてきたのが始まりだった。

そんな私たちは時間が合うと音楽室に集まり世間話や夢についてのんびりと、時に熱く激しく語り合うのだ。熱いのは私と忍足くらいでのんびりは大抵白石と財前かもしれない。

何故音楽室に集まるのかというと、私たち4人の共通点がそれだったからだ。写真にテニスに情報に、なんとなくバラバラな私たちにあった共通の“好き”と“趣味”が、“音楽”だった。
といっても音楽の趣味自体はあまりまとまっていないのだけれど。それでも一つのものを追うことでいったら一丸になれるのだ。

音楽室の掃除当番の生徒たちを。自分らがやっておくという口実で追い出して語り合う時間が私は一番好きだった。

白石は椅子に座って鼻歌を口ずさみ始める。その後ろには忍足がバチでリズムを取っていて、財前はその近くで箒をギターに見立てて指を動かしていた。その3人を捉えられる場所に立って、私はカメラのシャッターを切った。自然体な彼らを写す時が、私の一番の楽しみだった。


しばらく、時間が出来ずに集まれなかった間に財前はギターを買ったらしく、久々に4人揃った音楽室でその腕前を披露してくれた。まだまだぎこちなくて不安定ではあるけれど、心地のいい音色だった。
財前は嬉しそうだった。忍足は財前が弾くギターのそばでいつものようにバチでリズムを取っていたし、白石もいつもと同じように鼻歌を口ずさんだ。私はそんな3人をカメラに捉えた。

テニスをしている彼らを写真部や新聞部や白石を通して知っているけど、ここまで穏やかな表情を作ることが出来るのは皆が音楽に夢中になっている時だと現像した写真を見て思った。