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「そういやさ、隣のクラスの、……なんてったっけ」
「いや知らないよ」
「なんか女子と男子の代表みたいな名前した…」
「ごめん何を言いたいのかさっぱりわかんない」
「山田と田中だ」
「ああ、あの二人がどうしたの」
「付き合ってるらしいって崎が話してた」
「へー。ちょっと意外」
「だろィ?」
「そういえば隣の鈴木さんが沖田のこと好きって言ってたよ」
「マジですかィ。ところで鈴木って誰」
「Dカップの、あれ、ホラ美人さん」
「なんとなくしか思い出せねえや」
「沖田って性格悪いのにもてるよね」
「一言多い」

コーヒー牛乳を飲もうと、ストローを口にしたところに、沖田の手刀とも呼べるチョップが脳天に振り落とされた。危うくストローがのどに突き刺さるところだったわ! ストローが喉にささって死ぬなんて、そんな間抜けな死に方絶対いやだ。ストローを噛んで喉の奥へ進む前に阻止したけど。つーか女の子にチョップとかないだろォォォオオ!


「い、!った…」
「うちのクラスの、」
「は?」
「林がお前のこと好きみたいだぜ」
「え! 林が…?」
「おう。何が偉いのか自慢げに話してやした」
「うわ、林めっちゃいい人じゃん」
「どこがでェ」
「私を好きってところじゃね」
「……まあ、ここだけの話」

声を潜めて楽しそうな顔をする沖田に、背筋がゾクリとする。なんか裏情報でも持ってそうな雰囲気を出す沖田に、なんだかこっちまでわくわくしてきた。一度左右に目を走らせてから、こいこいと手招きした沖田へ近づくとやっぱり何か秘密でも握ってるらしく私の耳元に手をあてられる。吐息がかかりそうなくらい近くにいる沖田に内心ちょっとどきどきした。ほら沖田って性格とか趣向が残念だけど顔は大当たりだからさ。声も私好みなんだよね。低過ぎず高すぎずの沖田の声は耳に心地いい振動を与えてくれる。

小さな声で呟かれた言葉は、心地いい振動なんて与えてくれなくて、代わりに心臓の振動を加速させた。これを衝撃発言というのだと改めて学んだよ。


「俺もお前のこと好きなんだけど」





/wizzy