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「俺思ったんだけどさ」

雑誌を読んでいたら、さっきまで私とは別の雑誌を広げていたブン太がそれを閉じて私を見た。さっきまで鼻をほじっていた間抜けな顔はどこへやら真剣な顔をしたブン太がまっすぐに私を見ていて、不覚にもどきりと心臓が高鳴ってしまった。急に何だと問えば彼は「例えばさ、」そう視線を落として静かに切り出した。

「AKBが目の前にいたとするじゃん、俺に惚れるじゃん。それでも俺が一番に好きなのはお前だって思う」

まっすぐ真剣な眼差しでそう口にしたブン太だが私にしたらとてもどうでもいいような気がしてならない。…AKBがなんだって?
笑っていいのか喜んでいいのか複雑な心境に陥っていると、ブン太は再び視線を落として少しさびしそうな声色で「だからさ」と私を見ずに言う。

「もしNEWSのメンバーがお前の目の前にいて口説いてきても、俺のこと一番好きでいろよ」

そう、くそ真面目な顔で言うものだから私はいよいよ喜んでいいのか笑っていいのか泣いていいのか分からなくなる。

「とりあえずそんな状況ないと思うから安心して」

笑いたいのを必死でこらえつつ冷静を装って出てきた言葉がこれだった。ブン太はきっと可愛らしく「そんなこと絶対有り得ないよ!だって私はブン太が一番なんだモン」とかそんなくっそ甘い台詞を返してほしかったに違いないけど仕方ない。私のキャラじゃない、鳥肌もんだ。
適当にあしらってみたけど、でもやっぱ嬉しかったわけで真剣なブン太はジャニーズの誰よりもイケメンだったわけで心臓はドキドキしちゃうわけで。

「私の一番はいつもブン太だよ」

最後にデレてやったのは私なりの優しさだったわけだけど、ブン太がすごく嬉しそうに笑顔になったから私も堪えてた物が溢れ出してしまった。笑ってたら涙出て来て隠しきれなかった照れが出てしまって顔が赤くなっていった。笑いすぎたってことにしておこう。






葬星/