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ケースから、レンタルしてきたDVDを取り出して丸井先輩の部屋のPS3へセットする。もともとセットされていたさっきまで二人で見ていたDVDもついでにケースへ戻す。カチカチとコントローラーをいじって本編再生までさせたところで、私の隣にいる丸井先輩がベッドに横になった。 「えっ、寝ちゃうんですか?」 「寝ねーよ、ちゃんと見てる」 ちゃんと見てる、って…。 丸井先輩の頭は明らかに壁を向いていて、目はテレビとは正反対にある。頭の後ろに目が付いてるんだろうか。 壁にもたれ体育座りでベッドの上にいる私に、丸井先輩が一言「足伸ばせば」とかけてくれるけど、足を伸ばすより丸井先輩には起き上がってもらいたい。 「寝るんですか?」 「だから寝ないって、起きてるよ」 「だって目瞑ってる」 「ちゃんと見てる」 「見てないじゃないですか」 体育座りのままテレビを睨みながら唇を尖らせる。寝る体制に入った丸井先輩なんてもう知らない。私一人で見てます、そう言っていじけてやれば先輩は喉を鳴らして笑って一度開いた目を再びゆっくり閉じた。もう本当に知らない。 本編も終盤に入ってエンドロールが流れ始めたところでゲームとテレビの電源を落として、すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てる丸井先輩の隣に寝転ぶ。 「ん、もう終わったの?」 「先輩が寝てる間にね」 「だから起きてたって言ってんだろぃ」 そう言って深く息を吸って吐いた丸井先輩はちょっと起きてと私の頭を上げさせた。そして私が置いていた場所に丸井先輩は腕を伸ばした。 「いーよ」 「ん?」 「腕枕してやるって」 「えっ」 「好き?」 「…うん」 じゃあ早く、と私を急かす丸井先輩に流されるまま頭を腕に乗せる。ゆっくりと動いていた心臓が覚醒してしまったらしくドキドキと早く動き出した。もぞもぞと丸井先輩に近づいて耳を先輩の胸にくっつけてみる。トクトクと耳に優しい音が布越しに伝わってきた。あれ、先輩はドキドキしないの。 「お前ってほんと無防備」 「……先輩の前だけです」 「超可愛い」 丸井先輩の空いていた腕が背中に回って私の背中を優しく撫でる。 その手の動きに体がぞくりとして、そんな私の反応を先輩は笑ってからまた可愛いと呟いた。 「あー、覚めちゃったな」 「やっぱり寝てたんじゃないですか」 「そっちじゃねーって」 ぎゅうときつく抱きしめられる。先輩の胸板に押しつぶされて窒息するかと思った。 かけっこをするように心臓の音が走り出した。 「丸井先輩?」 「なに」 「先輩の心臓の音うるさいです」 「その口がうるさい」 背中を撫でていた手が頭の上に降りて来た。顔にかかった前髪を優しくはらう先輩の指がくすぐったくて気持ちよくて目を閉じたら、そのまま優しく口付けられた。 言葉も仕草も目線もすべてに口説かれているみたいだった。 いびつな官能によりそう 1周年記念/クロエ |