星とメランコリー | ナノ
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賛否であって


「…………」

昼休み、急に眠くなり保健室で時間つぶしもかねて休みに行こうと思い席を立つ。
昼休みなのに、教室に残っている生徒が多いせいか、室内はとても騒がしく昼寝には不向きだった。頭痛すら覚えるくらいうるさい教室にこれ以上いたら倒れそうだったってのもある。
あんまり人が大勢居る場所は嫌い、騒がしい場所も嫌。教室の中にいる人たちの顏を遠くから見つめる。こちらには気付かない。気付かれても対応に困る。

あの笑顔の中に、私は、前はいたんだとぼんやり思う。少しだけ、心の中に風が吹いたように寂しくなった。一人でいるのはとても退屈だしつまらないけど、他人と関わることに臆病になってしまった私は、自分の意思で独りを選んだんだ。あの中に入る勇気は今はもう持っていなかった。
一人でいるのは辛い、他人といるのも辛い。じゃあ私はどうしたらいいんだろう。どうしたら辛くないのだろう。

考えることも嫌になって、結局一人を選んだ私は、ただのめんどくさがりなのか。一人が嫌い、でも好き。そんな矛盾を抱えて、教室のドアを横切った。

ガラガラと保健室の戸を開ける。と、珍しく先生がいて、保健委員の白石が談笑しているのが目に入ってきた。白石が今日の当番なのか。こちらに気付いた二人にどうも、と小さく頭を下げて挨拶する。先生が「いらっしゃい!」と元気よく迎え入れてくれた。
白石の目がこちらに向いているのに気付かない振りをしながら、利用者名簿に名前とクラスを書き込んでいく。保健室に来た時間を書くために時間を確認しようと時計の方に視線を持って行く途中に、白石と目が合う。一瞬ドキッとしたけど、また気付かない振りをして時計の時刻を確認した。それを時刻欄に書きこんでから、先生にベッドの使用を告げる。先生は私の事情(不眠症ってことだけ)知ってるので笑顔を見せながらどうぞと了承してくれた。
頭を下げてお礼を言ってから、窓に一番近い奥のベッドへ横になる。このベッドに愛着がわいてくるくらいこのベッドにはお世話になっている。うちに持って帰ってやりたいくらいだ。あ、でも自分の部屋のベッドの方がもっと愛着もあるからいいや。

今日は寝れそうな気がして、目を閉じる。寝つきが悪いのですぐには眠れそうにないが、しばらくすれば眠れるような気がした。今日は割りと気分がいいからかな。心配事がなかったり、気分が良い日は安心して眠れる。
きっと今朝道端で拾った五百円玉のおかげだろう、と口元だけ笑んだ。五百円玉を前に素通りすることも警察に届けることもしなかったのだが、私は悪人だろうか。見方によっては悪人なのかもしれない。あの五百円玉はもっとそれを必要としてる人に渡った方が良かったのかもしれない。でも私が見つけてしまったんだから仕方ないよね。
そう自己完結して息を深く吸う。頭の回転がゆっくりになっていくのを感じた。