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―― 何で、どうして、何故、―― さっきから俺の頭の中にはこの3つの単語ばっか出てくる。疑問だらけじゃねえか。答えが出ない。答えが出せないまま次の疑問が生まれる。 「一つくらい、答えが出たっていいだろ…」 「え、……?」 「みょうじ」 「はいっ」 「このまま俺の問いに答えないつもりか」 「黙秘権を行使させていただきます!」 「このおはぎ、俺が食っていいんだな?」 「隊長甘いもの嫌いって言ったじゃないですか」 「嫌いとは言ってない。それにさっき俺にくれるって言っただろーが」 「言いました、けどっ…やっぱ私が食べたいです!」 開いている左手が小皿目掛けて飛んでくる。その手も開いている方の手で制して(あ、餡子が手首についちまった)、みょうじの目を見ながら口角を上げた。彼女の口は逆にへの字になり、悔しそう(というより恨めしそう)な顏で俺を睨んだ。 「で、俺を嫌いな理由」 「嫌いじゃないです!」 「じゃあ俺を避ける理由」 「黙秘です、言えません!」 「じゃあ言えない理由は?」 「た、隊長が泣いちゃうからっ!……いたたたたっごめんなさいごめんなさい痛いです!」 無言で手首を掴んでいる手に力を込める。涙目になりながら謝るみょうじは多分、俺の問いに答える気がないのだろう。 「そろそろ答えろ」 「いやです! 言えません!」 「阿散井の隣は楽しそうだな、俺が隣にいるときは苦しそうにするくせに」 「それは、っ…そのですね…」 「阿散井の隣は、お前にとっての居場所か」 「そうじゃないです、そういうことじゃないです」 「じゃあどういうことなんだよ」 「それが言えないんです!」 何で、そう口にした直後呼吸が止まってしまったのかと錯覚するくらい全身に痛みが走る。俺が無理強いして言わせようとしてるのに、みょうじは、俺には関係のないことだと否定しない。それは確かに、嫌っていない証拠で、関わりたいと思っている証拠でもある。じゃあそれが言えない理由ってなんだよ。嫌ってないなら何故避ける。俺が知りたいのはそれだ。それの他にも、コイツにしか答えられない問題がある。先ずは、俺を遠くに置きたい理由が知りたい。近づきたいのに遠くに置きたがるようなみょうじの行動は矛盾している。 「これ以上…俺に答えを出せない問題を抱えさせないでくれ…」 「え、っ…?」 「俺じゃ出せねーんだよ。疑問ばっか俺の中で生まれて、答えは俺じゃなくてお前にしかわからねえなんて、苦しいんだよ」 「…………」 「………悪い。俺の問題を押し付けてる、よな」 「隊長、私…隊長のことが嫌いで距離取ってるわけじゃないんです」 目を伏せながら、みょうじがポツリポツリと選びながら言葉を紡いでいく。問いただしてるのは俺で、俺が聞きたがったからみょうじに言わせている。だけど…今更だけど、言わせてしまっていいのか、彼女にも理由があってのことなのに無理矢理踏み込んでしまってよかったのだろうかと新たな疑問と罪悪感が渦の中に合い混ざる。ここで吐き出される言葉を止めることもできない。 「私…わたし…えっと…」 「………」 「恋次の隣は好きです」 「………」 「隊長の隣も大好きです。でも並ぶとつらいんです、苦しいんです…」 「どうして」 「……教えたからって、私のこと嫌いにならないでくださいね…?」 「…ああ、大事な看板娘だもんな」 「ま、真面目に言ってるんです!」 「俺だって真面目だっつの」 「隊長の隣に並びたくないのは、苦しくなるからです、…」 「………」 ぎゅう、とみょうじの両目がかたく閉じられる。胸が、苦しくなった |