ノイズメーカー | ナノ
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確かに、みょうじはよく六番隊を訪れる。そういえば六番隊から戻ってくるときは大抵書類と一緒に食い物を持って帰ってくるような気がしないでもない…。この前は鯛焼きで昨日は柏餅だったな。そして今現在そのみょうじはお目当ての阿散井の元へ嬉々として書類を届けに行ったきり戻ってこない。ちょっと前に松本が「おなまえなっかなか戻ってきませんねぇ…看板娘のくせに他の隊に浮気なんていい度胸ね!」と喚いていた気がするが無視を決め込んだ。相手にすると色々面倒だし仕事が片付かないと思ったからだ。

「ったく、松本のやつまた逃げやがったな」

まあ…書類整理も一先ず片が付いたし、外の空気でも吸ってくるか。

外へ出ればちょうど戻ってきたみょうじと出くわした。みょうじの背後には書類の山を持つ阿散井。

「あっ隊長! ただいま戻りました!」
「…ああ」

みょうじの後に続いて阿散井も挨拶する。それに軽く返しながら先ほど聞いたような松本の喚き声が頭の中に再生された。無意識的に入ってきていたと思ったのにしっかりと頭の中に残ってるのになんだかむなしさを感じた。が、今はそんなことどうでもよくて。
阿散井もみょうじもサボっていたわけじゃない。各々の仕事をしているだけだ。胸の中に波が立つ。ざわざわと波が高くなっていくようだった。

「隊長?」
「それ、うちの書類か?」
「あ、はい。私だけで持って帰るの大変そうだったので恋次をパシってやりました!」
「テメェにパシられた覚えはねーよ。俺から日番谷隊長に渡すもんがあっただけだ」

笑顔で副隊長をパシリに使いましたと言ってのけるみょうじには溜息しか出てこない。波は高くなるばかりだ。お前仮にも三席だろうが。
これ、六番隊からです。と阿散井が書類の束を見せる。確かにみょうじに持たせてたら目の前で積み上げられている真っ白い書類は今頃真っ黒に変わっていただろう。

「休憩中でしたか?」
「いや、ちょっと外の空気を吸いにきただけだ。その書類、執務室まで運んでもらえるか」

みょうじが阿散井を見上げながら「なんか隊長疲れてるみたい」と言っているのを尻目に二人より先に隊舎へ向かう。
”隊長疲れてるみたい”その言葉を頭の中に浮かべて、頭を抱えたくなった。誰のせいだよと本人に言ってやりたい気持ちをぐっとこらえる。

「お前が言うな、お前が」

本人に届かない程度の声で呟いた言葉は、俺だけが知っている。