ノイズメーカー | ナノ
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みょうじおなまえという女は十番隊の3席で松本曰く“十番隊の看板娘”らしい。割と新顔…のくせに来て早々馴染んでいた奴。ずっと前からいたと錯覚してしまうほど自然に溶け込んでいた。そう確信するとちょっとした恐怖心が沸いた。ずっと前からいたと錯覚しかけてコイツのこと何でもわかってるような気さえしてたけど、実際に知っていることと言えばコイツの好物と性格くらいだったりする。実際そんな知らなかった。そして何故か十番隊の看板娘になっていたみょうじだが、どこがどう看板になってるのか疑問は尽きない(確かに顔は広いみたいだが)。そして奴はとにかく自分の好きなものを語りまくるのが趣味らしい。というか癖かなのか? ただの自慢のはずなのに本当に嬉しそうに話したり、幸せそうに笑うからこっちまで当事者のような気になってくる。

「それにしても十番隊はいいですよねぇ」
「何だ唐突に」
「いやあ、隊長が私の隊長でよかったなあと思って」
「は?」
「あらぁー、おなまえそれ告白?」
「日番谷隊長だけじゃなくて、乱菊さんが十番隊でよかったって思います」
「さっすがおなまえわかってるー!さすがうちの看板娘ね!」
「えへへー」

ちなみに今は職務中のはず。何でこの部下二人は煎餅貪りながらくつろいでんだ? 昼休みは十分前に終わったんだがな。

「やっぱマスコットキャラがいない隊じゃないとね!」
「そーねぇー、そう考えたらうちってかなり豪華よね」
「目の保養しまくりですし!」
「あら、アンタ朽木隊長みたいなのが好みなんじゃないの?」
「……え? 朽木隊長がどうして?」
「だってよく六番隊に行ってるから…書類とか進んで持ってきたがるし」
「まあ六番隊も好きですしね!」
「お前十番隊がいいって言ってただろーが」

みょうじから持っていた煎餅をひったくる。なんかコイツが執務室にいると毎回何か食ってる気がする。

「もしかして阿散井目当てなの?」
「まあ…阿散井副隊長目当てですね」
「あら、あらあらあら」
「乱菊さん、なんか近所のおばちゃ、むご、!」
「お黙り!」

松本がみょうじの口に煎餅を詰め込むのを横目で傍観しつつ、手元にある先ほど取り上げたばかりの煎餅を齧る。がりっとした硬い音がなんだか心臓から生まれたように聞こえて妙な気分になった。
“阿散井副隊長が目当てですね”……、十番隊の看板娘が何言ってんだ。

「みょうじ、お前書類今日中に提出できなかったら減給だぜ」
「え、え? えぇーっ!」
「おなまえ最近食べてばっかだもんねー、三席なんだからちゃんと働きなさい!」
「それ乱菊さんに言われたくないです」
「松本…お前もだからな」