あなろぐがーる | ナノ
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見られている。‥‥見られている。

丸井の助けもあり、なんとか遅刻は間逃れたものの、息を吐く暇もなくヒシヒシと四方八方から視線を感じるはめになってしまった。原因はもちろん繋がっている丸井の右手と私の左手にある。そして相手が丸井という事にある。あの人気者の丸井と私…。なんだか申し訳ない。恋人でもない私達の関係は所謂ただのクラスメイトという関係だ。同級生だよ同級生。ただのクラスメイトが何故丸井と手を繋いでるのかと申しますと、前編を読んでいただければわかるように、挨拶しようとした丸井に肩を叩かれた拍子に私の眼鏡がずり落ち、そのまま私が落ちた眼鏡を踏んで壊してしまったからである。責任を感じた丸井がこうして私の目になってくれているんですが、これはこれで失敗だったかもしれない。

痛いよ、視線が痛い! 丸井の折角の申し出も裏目に出てしまった。丸井ボランティア怖い! 丸井くん勇者だよ! チャレンジャーだよ。すごいね、丸井を本気で尊敬するよ。丸井様様だねっ! 周りから送られてくる視線をものともせずズンズンと廊下を進んでいく丸井の背中を見ながら(怖くって丸井の背中しか見れない。まあ眼鏡もないしぼんやりとしか見えないんだけど)これからの事を考えた。えっと、えーっと、えっと…えー……っと……困ったな

「そこ、段差 気を付けて」
「ん」

これからどころか丸井のこと以外考えられない。丸井の体温とか、手の感触とか、丸井の一言とか、声とか、髪の赤さとか、肩幅とかがなんかどうしようもなく気になっちゃってしょうがない。こんな状況じゃなきゃ気にもしないような些細な事が気になって膨らんで、気になって気になって、いつのまにか視線(や殺気)なんてどうでもよくなった。いやどうでもいいわけじゃないし、怖いんだけど丸井の存在が大きすぎちゃってそれどころじゃないみたいな。って私なに考えてんだ!
これじゃあ私が丸井を好きみたいじゃないのさ!ああ、もう早く教室つかないかな!


(暫くこのままがいいな、なんて)

Joyful