黒曜石 | ナノ
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たまに、思う事がある。浅野さんは、本当は別次元の生物なのではないか、と。
何をどう仮定としたものなのかは自分でもはっきりとわかっているわけじゃないけど、ちょっと…っていうある意味で引いている時にああ、別次元だ、と思うのであるうんぬん。でも、実は僕自身がそうであって欲しいと望んでいるだけなのかもしれない。かもしれない、というか実際まあそうとしかいいようがないんだけれども。疎いと思うのも普段、毎度の事ってわけじゃなく、たまに、の話なんだけど。時々ね、時々。
その“たまに”っていうのはこんな時だったりする。

「水色ー水色水色-!みっずいーっろくぅーん!」

こんな時だ。距離を置きたくなる。 ちょっと知りあいとかって思われたくないんですけど…ようはそんな感じ。こう思うのは(普通に声にする時もあるけど。ケイゴに対して態度で示す事の方が多いけど)きっと、浅野さんをからかっていると楽しいというかリアクションが面白い、というちょっとした悪戯心も含まれてるんだろうな、と自己完結してみる。話がそれた。

「またどうかしたの?」

興奮気味に僕の名前を連呼する彼はまあいつもの事だとして(非常に迷惑極まりないけれど)笑顔で答える。

「おなまえちゃんのことなんだけどさあ!」
「…で?」

やはり彼はちょっと可愛い子なら誰でもいいんじゃないかな。事実 おなまえさんを知れば騒がない方が面白いけど(珍しい的な意味で)僕も興味ひかれるところがあるし。勿論健全な理由で。いや別に色恋が不健全というわけじゃなくて、純粋に、って事だ。恋が不純という事でもないけれど。…話が進まない。

「あれ、ケイゴおなまえさんのことさん付けじゃなかった?」
「ん?いやあ…井上さんじゃ被るしさあ、名前にさん付けするのおなまえちゃん照れるらしくってー。本人に許可もらっちゃったんだよねえー!どーだ羨ましいか水色!」
「いや、どうでもいいんだけど。用件は何?手短にお願いしますね、僕も暇じゃないんだ」
「ごごごめんなさいいいいいい!」
「(話進まないなあ…)」

あれ、僕には照れないのかな?いいや今度聞いてみよう。

「おなまえちゃんと保健室ってすっごい危ないと思うんだよ!なんつうかこう似合いすぎて…いろんな意味で!」
「…………」
「いや、何その目」
「…どうして保健室にキミとおなまえさんがいたのかと…」
「や、そんな軽蔑したような目やめようよ!オレが連れ込んだみたいじゃん!」
「…………」
「オレさっき体育で怪我したじゃん!」
「……へぇ」

これ見よがしに左腕をつき付けてくる浅野さん。ああ、確か…サッカーですっ転んだ時(スライディングシュートをした)に出来たやつかな。…ちなみにゴールはケイゴの活躍虚しくポストに弾かれてケイゴの顔面に跳ね返って終わったんだけど。その時出来た腕の傷には、きれいにガーゼが貼ってある(顔面の方が無事とかホント、しぶといというかなんというか…)……あ、大体わかったかも。

「おなまえちゃんがベッドで寝てたんだって!」
「……うわ」
「やめようってその目エエエエ!オレ悪くないじゃん!」
「(そういえば体育ダルイからサボるって言ってたなあ)」

本人曰く特売のための体力温存なんだそうだ。確か牛肉が、とか言ってたなあ。
おなまえさん…肉好きだなあ。今夜はすき焼きってはりきってたなー、すき焼きかぁ。僕も食べたいかも、すき焼き。

「おなまえちゃんにやってもらっちゃったんだよねぇー。羨ましい?羨ましいだろ?羨ましくないわけないよね?」
「浅野さん、今日は一段とうざいですね」

ニコ、っと(自称)屈託のない笑顔でケイゴに答えると、ドッと涙を溢れさせお得意のオーバーリアクションでのた打ち回る。うざい…というかムカつくと呼んだほうが正しいかもしれない。一々動きが…癇に障るなあ。…どっちでもいいけど。

「と、とにかく!おなまえちゃんすごかった!」
「頑張っただろうね。浅野さんのテンションについてくの」
「え、ちょ…そん、そんな…!ちがくって!」
「はいはい」
「保健室ってさあ白いじゃんイメージからして、そこにあの黒髪ッスよ?!やっばいやばい!輝くねありゃあもう!」
「なんとなくわかるけどさあ…それおなまえさんが聞いたら絶対ケイゴ距離置かれるよ」
「手当て終わったあとのおなまえちゃんの笑顔がまた、ね!かわいかったわけですよ小島隊員!」
「…………」
「あのすらっと伸びる白い手足にあの黒髪…しかも保健室!うひょう!」
「……や、ケイゴ…なんか…」
「ちょ、なんで離れてくの?男のロマンでしょ?ちょ、水色ォォォォォ!」
「うわー!いいけど!別にいいけどさあ、ちょっとキミ僕と住む世界が…!」
「何の話してんだよおお!別にいいじゃねーか!お前みたいに可愛い子片っ端からチョイス出来るお前と違って…!オレは…オレは…!」
「わかった!わかったよ!うん、ロマンね、わかったってば!」
「チクショー!オレだってなあお前並にモテたら!」
「モテるのでごめんなさい!(あれ話ずれてきてる)」

少し、異世界人(ケイゴ)の気持ちがわかった気がした。全くもって不本意なんだけど。保健室に、おなまえさん…うわぁ、もしかして僕今別次元の人間かも。


あれ、別次元の使い方おかしいな。
異世界人の考え




異世界人の考え