黒曜石 | ナノ
×


似てるか…。似てるとしたら俺は、お前と似てると思う。猫と似てると言われて、多少腹を立ててみるが似てる似てないで言えば猫なんかよりも、お前と俺の方が近しいものがあると思う。

自分の目が嫌いだと言った。恐れられてばかりの黒い目が怖いと言った。瞳が見えないほどの黒い目はまるで黒曜石のような輝きを放っているのに、どうして人は怖がるのだろうかとおなまえの目を見ながらふと不思議を抱く。自分と違うからか、彼女が。ばからしい。
彼女の気持ちが分かるような気がするのは、俺と同じだからか。過去が似ていたからか。似てる…確かに。怖がられても、ちゃんと理解してくれる奴がいることを知ってるところも似てる。俺は彼女のように自分の目が嫌いだなんて素直に言えない。自分を否定することが出来なくて、受け入れることを俺は受け入れ、否定することをあいつは受け入れた。どちらが正しくて間違っているとか次元が違うにせよ、似てるところ違うところがあって、どうしても彼女を他人のように思えなくなる。目を閉じたまま再び嘲笑がもれた。ふざけてんなよ。

“俺は綺麗だと思ったけどな”

そう確かに言った気がする、あいつに。彼女は薄く笑いながら「同じだね」って呟いた。何が同じなのか分からないけど、俺が分かるのは綺麗だと思ったと口にしながら本当は自分と重ねていただけなのかもしれない。自分の瞳を怖がる奴がいた、それでも誰かに自分の瞳が綺麗だと言ってもらいたかったのかもしれない。純粋に、彼女の目が綺麗だと思ったけど、言葉の裏の奥に自分への言葉が含まれていた。そのことを誰も咎めはしないだろうが、どこか女々しい自分がひどく滑稽で阿呆のように見えた。

気に食わないとすれば、俺と黒崎を重ねられたことかもしれない。
優しいんだね、と社交辞令なのかなんなのか知らないが呟く彼女の目は俺の奥を見つめながらどこかへ向けられて、その先に黒崎一護の存在を見た。

「優しさに形があるとしたら、黒崎君と冬獅郎君は似たような形をしてるんじゃないかな」

そう言う彼女の表情はとても穏やかで、でも目が悲しげに伏せられて睫を揺らしたのが昨日のことなのに今目の前で見ているように思い出せる。俺に優しさなんてない、とは否定しないけど黒崎と同じって部分は否定したくなった。なんかやだ。

「それが丸い形をしてたら二人ともきっといびつな丸だよね」、と笑いながら堂々と失礼なことを口走ったのを鮮明に覚えている。


「…………」

窓の縁に座っていた猫がにゃあと一声鳴いたのを聞いて、目を開ける。俺は寝てたのか、起きてたのか、解らない。ただずっと考えていた。

「…………」

ずっと見つめていると、吸い込まれそうな…黒。吸い込まれたいと思ってしまうような、黒く澄んだ世界。怖くない、綺麗すぎるんだ、黒が。醜さを浮き彫りにしてしまうように、綺麗でいようと偽るのを飲み込んでしまうような、黒。瞳が見えないほどの黒は死人のようだと、比喩したおなまえを笑ってやりたくなった。勘違いすんなよ、自信持ってればいいんじゃねえの。俺はこの言葉を形にしたっけか。

「何 あいつの事ばっか考えてんだか」


黒があんなに透き通るなんて、
焼き付ける鮮烈