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まず、話の順序というものを思い出してみようと思う。 放課後、確か今日はおなまえがバイト休みだったから一緒に帰ろうかなぁ、なんてちょっと期待しながらおなまえの元へ声をかけにいくはずだった俺のことを、「よし行くぞ一護!」とクラスの連中がいないことをいいことに(ちらほらいたけどな)本性丸出しの朽木さんに拉致られたってわけだ。何がよし行くぞ!だよ。どこにだよ。 ぐいぐい腕を掴まれて俺の予定を狂わせた挙句声をかければ「うるさいすぐに分る黙れ」の一点張り。ちくしょう! 脳天にげんこつでも叩き込んでやりたかったが、後でおなまえにちくられて色々言われるのが嫌だったのでなんとか我慢してルキアの後に続いた。そしてたどり着いたのが黒崎医院とかいう病院……って俺ン家じゃねーか! 静かに(なぜか)ショックを受ける俺をお構いなしに、ルキアが「ただいま戻りました!」と中に声をかける。その後に中から出てきたのが、まあ…乱菊さんと冬獅郎だったわけだ。何でいんだよ、と思った。うん。ルキアが急いでいた理由までは分った。けど、どうして隊長格が揃ってここにいるのかという理由まではわからなかった。 「そりゃあ、もちろん有給取ったからに決まってんでしょー?」 「いや、だから…」 玄関先からところ変わってここは俺の部屋だったりする。どうやら本当に今回は十番隊の隊長2人だけで来たようだった。有給という言葉に、ぴくりと冬獅郎の眉が動いた。 「有給じゃねえ、任務だ」 「あ、やっぱりそうなのか」 「それにしても、隊長格2人とは…一体どのような任務なのですか?」 「そのことなんだけど、よくわかんないのよねー。虚捕獲としか…」 「はあ? んだそりゃ、いい加減じゃねーかよ」 「よくわからない、と申しますと…」 「技術開発局の連中のミスなのに、なーんかウチに出動命令が出ちゃって…いい迷惑よ」 「の、割にはー、楽しんでますよね」 「あったりまえじゃない! 技術開発局のミスを尻拭いしてやるんだからこれくらい楽しんだって罰当たんないでしょ!」 「いや、あの…冬獅郎が睨んでるんでもうちょっとオブラートに…」 「とにかく! 技術開発局が珍種の虚を逃がしちゃったのよねー。実験中の。まあ涅隊長が相手だし逃げたくなるのもわかるけど」 「虚に珍種もなにも…つーか冬獅郎めっちゃ睨んでますけど」 「珍種は珍種よー。隊員たちじゃ手に負えないんだもん」 「それは、また……」 「それにしても何でウチに…隊長、涅隊長に何かしたんですかー?」 「してねえ。命令なんだから仕方ねーだろ」 冬獅郎の注意(っていうか指摘)も無視して、ほんっと最近気が緩んでんじゃないのかしら、と乱菊さんが髪をかきあげながら悪態を吐いた。溜息まで吐いたところで 「まあ、こうやって現世でのんびり出来るわけだし、感謝はしとくわ」と言い出した。この人はいつも楽天的だ。実際に溜息を吐きたいのはきっと冬獅郎の方だと思うとちょっと同情したくなった。 「ってか、冬獅郎たちどこに泊まるんだよ」 「ここでいいんじゃないのか?」 「いやいや、俺ン家にそんな余裕はねえ」 えー! と乱菊さんから上がる不満の声を無視していると、「ただいまー!」と遊子たちの声が聞こえた。その後に、「お邪魔します」というおなまえの声。 「……げ」 間の悪いときにおなまえが来た。いや別に悪くないけど。悪くないけど出来ればこいつらとおなまえは会わせたくなかった。乱菊さんはきっとおなまえで遊ぶだろうし、おなまえはきっと冬獅郎を気に入るだろうから。後者がやっかいだ。前までは冬獅郎についてこういうことを思ったことはなかったけど、奴のせいで嫌でも冬獅郎が気になる。冬獅郎というか冬獅郎の容姿に。容姿で人を選ぶとかじゃなくて、目の色だとか髪の色だとかが……おなまえお気に入りの加藤の奴と被って見えて仕方ねー。加藤のことを思い出したらなんとなくムカついたので冬獅郎の頭をぐしゃぐしゃ撫でてやった。殴られた。 このままだと鉢合わせるのは必須 どうすっかなー |